彼氏限定

「よしくんよしくん。最近聞こえにくいね、となり」
「そうだな。そりゃいいことだ」
「もう一個の部屋でしてるのかしら」
「でしょーなぁ。あそこの西隣は入居者いないらしいから、西側の部屋だと隣に聞かれなくて済むって思ったんじゃないの」
「こっちでしたって気にしないのにね。むしろ聞きたいっていうか」
「ちづるさん、俺は嫌です。男の喘ぎ声なんてまっぴらごめんです。萎えます」
「えー」
「えーじゃないし。普通の感覚だし」
「普通に生きてちゃつまんないよ、よし君」
「そこは普通でいいよ。ちづるだって、俺が男好きだったら嫌でしょうが」
「え! なんで」
「なんでって……あんた俺の彼女でしょう」
「いいよ。女の人が相手は嫌だけど、浮気相手が男なら許しちゃうよ」
「わっかんねぇよ、その感覚」
「なになに、いるの? いるの? 男に言い寄られてたりするの?」
「ないよ、ないからそんな期待の眼で俺を見ないで」
「ち」
「ちづる、ほんとに俺のこと好きなの?」
「好きよ。でも、よし君に彼氏ができたらもっと好きになると思う」
「おかしい。それすっごいおかしい」
「あーあ、よし君に彼氏ができますように。三角関係美味しいです。横恋慕大賛成です」
「やめてちづる。俺また泣きそう」
「好きな人ができたら言ってねよし君? 男の人限定で身を引いてあげるから」
「あ、女相手は引かないんだ」
「当たり前でしょう。私よし君大好きなんだから、何言ってるの」
「ちづるの愛がわからないよ俺……」

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