ファーストキスは

「ファーストキスだと? んなもん覚えてねぇよ。どうせ幼等部のときだろ」
「会長って、幼稚園の先生とかに『結婚してやる』とか言って捧げてそうっすよね。おませさんっつーか」
「勝手なイメージ作り上げんな! 口塞ぐぞ」
「ええと……唇で?」
「なっ!」
「なんちゃって、うっそー」
「……お前、神経図太くなったな」
「こうでもなきゃやってらんねーです」

◇◆◇

「僕は……いとこの女の子と」
「え、え、副会長! 女の子と付き合ってたんですか!」
「十も年下の、幼稚園の子だけどね。ちゅっと奪われちゃった」
「あー……、そのくらいの子からすれば、唐橋先輩っていかにも白馬の王子様ですもんねーわかるわー。その子も見る目ありますね!」
「君の中の僕のイメージ、変に美化されてない?」

◇◆◇

「俺? 俺はね、中等部のときにカテキョのおねぇさんと」
「!!」
「あはは、今AVみたいな展開想像しただろ」
「……うらやましすぎるこんちくしょう」
「あ、俺とキスしたら間接キスになるんじゃない? する? しちゃう?」
「ファーストキスと今現在が遠すぎます」

◇◆◇

「そ、そんなこと聞いてどうするのさ! ばっかじゃないの!」
「あー、倉持はキスまだなのね。了解した」
「なっ!」
「おお、顔真っ赤」
「ば、ばか! 変態! 大ッ嫌い!」
「さすがに『嫌い』は傷つくかも」
「えっ……あ、本気じゃ……ない、もん」
「知ってるよ、倉持っていい奴だなァ」
「! この、馬鹿!」

◇◆◇

「高倉先輩は好青年だし、割とまともそうですよね」
「ん、そう見えるか? ありがとな」
「で、実際のとこどうなんすか」
「じつはまだしたこと無いんだなー、これが」
「へっ?」
「って言うのは冗談だけど、内緒な」
「えー。ずりーっすよ」
「好きなやつに、昔のキスの話なんてしたくないだろ?」
「……イケメンぱねぇっす」

◇◆◇

「俺のファーストキス? うーん……聞かない方が良いと思うよ。鬼沢先輩いるし」
「なんだよ、もったいぶるなよー。鬼沢先輩だってそこまで昔のこと怒らないだろ。ねぇ先輩?」
「まぁな」
「いや、でもなぁ」
「何だよ、女の子じゃあるまいし」
「じゃあ言うけど」
「うんうん」
「俺の相手、お前」
「……ん?」
「うん、おまえ。幼稚園のときに、ふざけてぶちゅっとしたじゃん」
「ちょ、ちょっと待っ!」
「嫌がる俺を悪がき数人で押さえつけて、ムリヤリ……」
「よし……てめぇ覚悟はできてんだろうな」
「ぎゃー! 鬼沢先輩ー! 怒らないって言ったのにー!」
「だから忠告したのに」

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