ウィンガルは勘弁しろと頭を抱えた。


ここ最近、頭を抱えっぱなしのような気がしないでもない。その原因はもちろん、彼の目の前でしてやったりと、悪戯が成功した時のような顔をしている翡翠色の髪の彼女。ニコリと艶やかに笑うセリアに魅せられて、近くにいた兵士たちが頬を染めてゴクリと生唾を飲み込んだ。それに厭わしそうに視線を投げかけ、あっという間に兵士らを恐怖で固まらせたウィンガルはもう一度セリアを冷たい視線で射る。いちいち兵を誘惑するな、鬱陶しい。



「このくらいで調子に乗ってもらっては困る」

「だって、初任務だったんです私。成功して嬉しいんです」

「成功など、当たり前のことだろう」



先程の笑顔はどこへ行ったのか。しゅん、と項垂れたように視線を落とし、眉をへの字にするセリア。近くにいた兵士たちはこれではあんまりだと、ウィンガルに怪訝そうな視線を送る。と、いっても彼が恐ろしくてすぐに止めたが。

ズキズキと痛みが増す頭痛に苛立ちながら、ウィンガルは僅かに眉をひくつかせた。これではまるで、自分がセリアを苛めているようだ。この女、絶対心の中でざまあみろと嘲笑っているだろう。このままではあまりの苛立ちに増霊極を発動しかねないと、大きな溜め息をついてウィンガルは腕を組んだ。



「…お前の戦闘能力は認めてやろう」

「本当ですか!?」



さっきとは一転して、パァっと花のように笑みをこぼすセリアにウィンガルは心の中で蔑む。本当に反吐が出る、この女の本性を知っているから尚更。しかし、そうセリアのことを忌み嫌っているウィンガルだが、先程の言葉はお世辞でも嘘でもなく彼の本音であった。

初めて会った時もそれは圧倒されたが、まさかここまで戦闘に長けているとは思わなかった。自分の手にある報告書を一瞥して、ウィンガルは思う。そこに書かれているのは盗賊討伐達成の文字と、それについての詳細。驚くべき点は、その討伐された盗賊の数だ。自分がこの任務を任せた際、潜んでいる盗賊は10人程度だと聞いていた。なのにここに書かれている数はその3倍。それにセリアに同行させた兵士に聞けば、自分たちは予想以上の敵の数に腰を抜かし、全く戦えなかったという。つまりこの30人はセリア一人で討伐してしまったということだ。かすり傷もなしに。



「まぁ、このくらいなくてはな」



陛下が見込んだほどの女だ。性格は最悪だが。


ウィンガルが下がれ、と促すとセリアは小さく笑んで会釈をした。そして翡翠色の髪をふわりと揺らし、彼に背を向ける。すらりとした足が部屋の出口へ向かって行くのをぼんやりと見ながら、ウィンガルは目を伏せて小さく笑った。彼女の思惑は未だ謎だ。しかし少しずつ解き明かしていけばいい。さぁ、これからどう使ってやろうか。



(20111114)

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