部屋の電気もつけずなまえは部屋の隅でただ蹲っていた。眉間には深い皺がいくつも寄せられ、息苦しさに喉元を手で押さえている。突然襲い掛かる胸の痛み、止まらない咳。今まで何度もこんな経験をしてきた、原因が何なのかもなまえは知っていた。しかし原因が分かっているところで最早後戻りはできない、なまえは壁に寄り掛かりながらもゆらゆらと立ち上がる。


嗚呼、ウィンガルに呼ばれてたんだ。早く行かなきゃ。ぐるぐると回る視界に恨めしそうに舌打ちをした。思いとは裏腹にこの身体は限界を訴えている、だけどそれでもなまえには立ち止まれない理由がある。燃えるような赤の双眸を思い出し、なまえは今一度足を動かす。


自分は民のためにとか、ましてや世界のためにとか、そんなことを思えるほどできた人間じゃない。ただ、自分を救ってくれた一人のために。


「耐えろ…まだだよ…」


ゴホッゴホッと咳をし、口を押さえた手を見れば鮮血。本当は分かっている、自分の命がもうすぐで尽き果てることも。それでもとなまえは瞳を伏せて緩く首を振った。彼の、ガイアスの野望が叶うまで、私は彼の力になりたい。彼の傍にいたい。



ねぇ、神様 もしいるのなら。


あと少しでいいから、私をこの世界に繋ぎ止めて。



(20111123)









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