他人の前では弱音は吐かない、ついでに言うと強情で一切隙がない。だけど時折見せる柔らかい笑顔は年相応の女性の顔。気付けば彼女に惹かれている自分がいた。

だが無理矢理自分のものにしようという気はない。時間はまだまだあるし、何より彼女を自分の力で振り向かせたい。男の意地というものか、もしそうだったとしたら幾分笑える。だがそんな自分は嫌いじゃない。



「陛下、」



彼女の鈴のような心地よい声が自分を呼んだ。しかし何故そんなに暗い声で俺を呼ぶのだ?そう問いかけようとした。その瞬間、彼女は眉間に皺を寄せて口を噤む。まるで必死に涙を堪えているかのような仕草だったから、俺はたまらず手を差し出した。

はずだった。



「へいか、ガイアスさ、ま」



とうとう彼女の瞳から一粒、また一粒と涙がこぼれ落ちる。その涙を拭ってあげたい、もう泣くなと彼女を抱きしめてあげたいのに。動かない手、言葉を紡げない口。ぼんやりと揺らいだ視界の中、自分の隣で嫌だ嫌だと首を横に振り泣くことをやめない彼女。嗚呼、俺に泣き言を吐くお前を、素直にありのままの自分を曝け出すお前を。



「死なない、で」



まさか最期に、こんな形で見れるなんて思ってもみなかった。



(20111003)









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