ゆらり、ゆらり。水面に映る赤をぼんやりと見つめ、彼女はそれにそっと手をのばした。もしこの赤が掴めるのなら、深く奥底まで沈んだっていい。しかしのばされた手は水面に触れる寸前で動きを止める。否、止められた。彼女の後ろから逞しい手がのび、その細く折れそうな腕を掴んでいたのだ。 「俺はここにいる」 小さく、いつもの低い声でそれだけ呟いたガイアスを背中で感じ、彼女は振り返らないまま僅かに頷いた。確かにそこにいる。いるけれど。貴方はいつか、私の傍から離れるよ。そしてそこにいたことも忘れていくんだよ。それなら。 彼女は水面に映る自分とガイアスの姿を一度見て静かに目を伏せる。例え、これが永遠の幻でもいい。自分がずっと彼の傍にいる夢を見ていたい。お願い、それくらい望ませて神さま。 未だガイアスの方を振り向けないまま、何も言えないまま、彼女は長い睫をひっそりと濡らした。 -------------------------- 三角関係の続き的なもの。これここでシリーズにしていいですか?← |