小さい身体とは裏腹に、僕を包む情愛はとても大きく温かかった。居心地の良さに甘える僕の態度は、紺子ちゃんには男と云うより子どもに映っていたんだろう。
手を繋ぎたいと願っても、抱きしめて良いかと頼んでも、紺子ちゃんはいつだって笑って甘えん坊の言葉で僕をくるんで受け入れてしまう。
それがいつだって僕を安心させて、また絶望させるのだ。

ねえ紺子ちゃん、僕は君が好きだよ。怯える僕に、恐くないよと添えられた手も、慰める言葉も、いつだって全部自分だけのものにしたいと思っているよ。
気付かないのは僕が何一つ伝えないから。そして彼女が鈍いから。
その鈍さから何の警戒心もなく僕の懐に飛び込んで来れるのなら、僕は寧ろ感謝するべきなんだろうか?

「僕は紺子ちゃんが好きだよ」
「ん、おらも吹雪君が好きだべ」

親愛の一場面として流すにはあまりに酷で滑稽だ。
手を繋いで伝えても、やはり僕の言葉は親愛の域を脱しない。
男はみんな狼だよ、なんて言ってみても紺子ちゃんは「吹雪君は違うべ」なんて全く嬉しくない言葉をよこすんだから堪ったものではない。
信頼も親愛も振り切って、狼みたいに君を食べちゃえたら、君は僕の気持ちに気付いてくれるのか。出来もしない算段は今日も僕の脳内でフル稼働中なんだ。





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