凛とした視線が僕を通り抜けてここにはいない誰かを見詰める。
憎しみも悔しさも嫌悪もなく。僕は只この青空の下で僕と同じようにサッカーをしているであろう恋敵に思い馳せてはまたナツミに視線を戻す。
繰り返される日常の中に組み込まれた小さな亀裂が少しずつその姿を現す。
好きの矢印が繋がりあってまるで一本の直線のように一カ所に集まるとしたら、きっとその中心にはマモルがいるんだろう。
マモルの為に一人僕等の前に現れたナツミ。
僕等の為に一人マネージャーの仕事をこなすナツミ。
だけどそのナツミの瞳が僕たちに向かって申し訳なさそうに伏せられるのに気付いている。
いつか必ず訪れる別れは、ナツミをマモルの隣りに近付けるのだろうか。帰る場所が違うだけで人はこんなにも寂しくなれる。
それはきっと僕がナツミに恋しているからだ。
マモルに負けたくないと思う。サッカーでは絶対に。
でもこの恋は。あまりに初で拙くて。ナツミの幸せを願う以外の筋道を、どうしても見つけられなかった。
寂しい。だけどこの恋はきっと間違いじゃないんだと思う。

「ナツミはマモルが好きなんだね」

そう尋ねた時の、ナツミの驚いた顔。そして照れながら僕の言葉を肯定した直後に見せた、あの笑顔を、僕はきっと忘れない。
不思議だね。言葉足らずなナツミの言葉が、ふとした仕草や表情から、おかしなくらい読み取れる時があるんだ。
僕はきっと、どうしようもなく君が好きだよ。





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