上手くいかないことは、結局何をどうしたって上手くいかない。そう諦めてしまうことはきっと凄く簡単で難しくて悲しいことだと思う。
円堂君が、好きです。何度も告げようと、一人心の中で練習したりもした。
だけど当たり前に過ぎる日常の中に、円堂君の側で果たすべき役割が私に与えられているのなら、そんなに焦らなくても良いよね、って自分に言い聞かせて来た。
今になって振り返る、馬鹿だなあ、と思う。
大切な人ほど、あっさり目の前からいなくなってしまうんだってこと、私はもう知っていた筈なのに。

伝えてあげたかった。行き場無くただ膨らむばかりのどうしようもないこの恋を。
円堂君の隣で誰かが微笑んでいるのを見る度に勇んでいた気持ちは萎んでしまうのだけれど。
今、私が円堂君に好きだったと伝えれば。円堂君はきっと申し訳なさそうにその顔を曇らせるだろう。
好きと好きが繋がれる喜びを知った人間は、きっと好きが弾かれて落ちてしまうことの悲しみだとか切なさも理解出来るようになるものだから。

初恋は、実らなかった。二度目の恋は、同じように実らなかったけれど、ひとりでに成長し気付けばひっそりと私の中で咲いていた。
それを円堂君に差し出すことは出来なかったけれど。枯れ果てる前に私はその恋に頑張ったねって言葉を掛けて抱き締めるの。それくらいは、許されるよね。





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