抜け殻の様に残された花嫁衣装を眺める度、まるで今でもリカがすぐそこにいるみたいで、只の衣装が愛しく思える。 だけど、抜け殻な衣装はもうリカが此処にはいない現実を突きつけるから、只の衣装が何だか凄く憎たらしくて今にも引き裂いてやりたくて堪らなくなる。 元々此処にいるべき存在ではないと知っている。仲間に連れ戻されずとも恐らく直ぐに私たちの前からは姿を消していただろう。 だけど、リカに出会って離れて寂しくて。 いつだって此処に来て欲しくて堪らない。 多分、一人の時を狙えば自分にだってリカを此処に連れ戻すことくらい容易な筈で。 だけど強制ではなくリカの意志で自分の傍を望んで欲しいからやっぱり迎えに行くなんて出来ない。 セインに我儘を通して譲り受けた花嫁衣装はいつだってギュエールの部屋を占領していた。 花嫁衣装は、女の子の憧れとしてこの部屋に置かれたのではないと、果たしてどれだけの仲間が気付いてやれただろう。 日に日に花嫁衣装を眺めながら零す溜め息の数を、誰かが数えていたのなら、きっとギュエールの背を押してリカに会いに行くよう諭してやることもあったろう。 だが秘めたる少女の恋は今日も夢見心地で終わる。 色恋に舞いやすいリカは、きっと見目麗しい男に、今日も熱を上げるだろう。いつだって一時だけの熱。だけどその対象としてギュエール自身がなることなど無く。 抜け殻を抱くギュエールはまだ動けずに愛しい少女の名を呟くしか出来ないのだ。 ←→ |