その笑顔の裏に、悲しみや苦しみとか、そんな黒い感情が隠されている事くらい、相手が人間である以上当たり前の事だったんだ。
だけど彼の笑顔がそういった暗い感情を押し込める為の偽りの笑顔かと聞かれればそんな事はなかったから。
「キャプテン、」
僕がそう呼び掛ける人物はこの世でたった一人、キャプテンだけだ。そしてこの呼び掛けに応えて振り返ってくれるのも、キャプテンだけなんだ。
「吹雪?」
「キャプテンはすごいよね」
「何が?」
どちらかといえば僕も普段から笑っている。だけど僕とキャプテンの笑顔は何だか種類が違うもののように思う。だから僕はキャプテンに惹かれたのかな。寒いのは得意じゃないけれど、暑いのはもっと得意じゃなかった。そんな僕が熱血で太陽みたいなキャプテンをこんなに想って焦がれているんだから、世の中って分からない。
「吹雪?」
「ねえキャプテン、笑って」
心の底から突き上げる感情に促される時だけに笑って。心配掛けないようになんて無駄な心配はしないで良いよ。キャプテンの笑顔を曇らせるものなんか、いつだって僕が払うんだから。
「吹雪も笑ってよ」
「?笑ってるよ」
「俺と一緒に笑ってよ」
泣きそうなキャプテンは下手くそに笑う。それを見た僕はキャプテンが僕だけに見せた気持ちが嬉しくて笑う。きっと自然で上手な笑みだったろう。

そうだね、僕らはいつだって共に在ってそして笑おう。





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