お泊まりの寝床は牙王の部屋。仲間に入れてと花子が飛び込んできたまでは許容範囲。何故兄ではなく自分の布団に潜り込むのか。兄の寝息に花子は笑う。月明かりに照らされた笑みの口元、覗く舌にフルーツの様な鮮やかさ。美味そうとノボルは唇を舐める。昼間とは違う、夜の魔が忍び寄っていた。/ノボ花【昼間と違う / まるでフルーツのよう】

触れちゃダメだ。タスクは警告する。タスクを見つけるなり全速力で駆けてきた、息を弾ませ頬を紅潮させた牙王に唾を飲んだ自分の危うさを知っている。触れたら暴きたくなる。犯したくなる。だから――「…タスク先輩?あの、何でさっきからほっぺ撫でてくるんだ?」ああっ手が勝手に!!/タス牙【触っちゃダメ / 息をはずませて】

そういう言葉はもっと大人になってから使うだわさ。てる美の手厳しい切り返しに、テツヤは「酷いYO!」と天を仰ぐ。ありのままの言葉はあけすけで、彼女はただ警戒する。しかし「愛してる」と、それだけの言葉でしかテツヤはてる美の世界に入り込むこともまた出来ないのであった。/テツてる『愛してる』

ノボルの頬に、おしゃまにリップ音を鳴らし花子はキスをする。「何だよ今の!?」「誓いのキスだぞ!」得意気な笑顔が可愛かった。「花子はノボルのお嫁さんになるから!」じゃあ何処までも浚われてくれるのかよ。例えば海の向こうまでとは、終ぞ聞くことがノボルには出来なかった。/ノボ花『誓いのキス』

若き総帥様は忙しい。キョウヤと顔を合わさなくなって49日。学校は煩わしく祠堂やソフィアとは波長が合わない。キョウヤ以外に馴染めれば何処にでもいけると自信を持っていた。けれど本当にそうだろうか?会いたいと伝える術すら持たない友達が、ロウガに重たくのしかかっていた。/キョウロウ『君を想う』

寝たふりだな。風音の呼吸のぎこちなさ、牙王はどうしたものかと頬をかく。名前は呼んだ。身体も揺すった。大きな音も立ててみた。なのに瞼を開けてくれない風音に施せる処置なんて「――キスするとか?」そんな童話があった筈と言い訳するより先に、風音は顔を赤くして目を開いた。/牙風『眠れる姫君』

きっと誰もが最年少バディポリス龍炎寺タスクに完璧を映している。その完璧が大人とイコールであればタスクは妄想を喜んで受け入れよう。「ただ君にだけは、」そう、包まれた手の大きさに牙王はタスクの等身大を描く。俺だけは忘れずにいよう。向き合う彼は、ただの人間だったと。/タス牙『きっと誰もが』

喧嘩したんだって。お互いの顔を見ないよう背けている爆とくぐるは、牙王とドラムの困り顔にもだって悪いのは相手だからと折れる気配がまるでない。「何だ、嫌いになっちまったのか?」しかしドラムの問いに「嫌いじゃない!」と即座に答えたのは果たして、どちらだったか。/爆くぐ『嫌いじゃないよ』

「風音は俺のライバルだ!」晴れた空のような笑顔に、けれど風音はいつからか欲しいのはそんな言葉じゃないと思っていた。「ごめんなさい、番長さん…」牙王とのファイトは楽しい、大好きだ。ただそれ以上に――「番長さんが好きなの」溢れ出した想いは、もう隠せない。/牙風『そんな言葉じゃなくて』

「お礼はよくてよ」小さな婚約者に微笑みと投げた言葉に偽りはない。しかしその礼の理由であるゲンマは寧ろ礼のひとつくらい寄越してもいいのに。まあ女心などわからなそうな清風会という集団の長に期待しても無駄だろう。何故期待したのかは、問題にはしないこととする。/ゲン鈴『期待したのに』

頬へのキスは親愛と厚意と満足の証。そんなのステラには嘘だった。滝原の奥手は今に始まったことではないけれど、色欲も好意も何もかもちぐはぐで満たされない現状にステラはもう充分耐えた。だから。「唇に、してください」赤くなる滝原を、今日は絶対に甘やかしてあげない。/滝ステ『満たされない』

「行ってしまうの」ソフィアの表情は変わらない。キョウヤから去ろうとする荒神を引き留める意志など微塵もないようだった。「行ってしまうなら、帰りなさい。――いつか、私の下へ」見送りの戯言には上出来だと背を向ける荒神は、彼女の頬を伝う一筋の涙を見なかった。/ロウソフィ『一人にしないで』

思い出と長く居すぎた。グレムリンが悟ったとき、彼の目の前には大切過ぎた少年と同じ太陽を背負った学ランを纏った少年がいた。太陽が眠る墓すら忘れて、太陽のない空を見上げたくなくて地底の闇へと潜ったのに。逃げ続けた代償は、彼より苛烈な太陽による怒りの拳だった。/烈陽『長く居すぎた代償』

「笑ってるんでしょ、私のこと」全部なくした私のこと、忠誠は届かず、力は足りず、友達は――きっと最初から要らなかった。今はもう、私が一番要らない。そう泣き崩れるてる美をテツヤはただ抱き締める。笑わせてあげたいのに、歌もダンスも披露できる状況ではなかった。/テツてる『ただ抱き締めて』

突き付けた切っ先に見開かれた瞳を愛しいと思った。けれどもう、僕の前で出会ったあの日のように輝くことはないだろう。僕も、きっと二度と君の前に立たない。それでもせめて、この刃で君を傷付ければ消えない痕となり君を所有できるだろうか。濁る瞳にはまだ、太陽が映っている。/タス牙『所有の証』


※お題はすべて診断から。


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