久しぶりの休みだというのに朝早くに起きてしまった私は、まだ微睡みに浸っていたくて横になっていた体をうつ伏せに、自分の頭の下にある枕に顔を埋めて強く抱きしめた。
深く空気を吸い込むと、鼻の奥に広がる太陽の香り。少し動いただけでもわかるさらりと滑る心地の良い新品のシーツ。私の隣で静かに眠る彼女に、昨日のことやこれからのことの思い、心が躍る。
そう、私と七緒ちゃんは同棲を始めたのです。

新婚ならば、初夜にあたるであろう昨晩。笑ってしまうくらいにふたりの間に何かあるなんてことは今更なかった。
こうして一緒に暮らし始める前にお互いの部屋を行き来していた高校生時代と何ら変わりなく、(私にとっては)健全な時間を(私にしては)遅くまで過ごしたので正直に言ってしまえばとても眠い。……眠いのだけれど、折角増えた七緒ちゃんとのふたりだけの時間を楽しむために少しだけ我慢して朝食でも準備しちゃいましょうか!

……と、思っていた時期が私にもありました。
立ち上がろうとした際にベッドのスプリングが大きく弾んでしまったせいか、起きてしまったのだろう七緒ちゃんは、美術品のように白くて美しい腕をこちらへ伸ばし、まるで「行かないで」とでも言うように私の左手首を掴んでいる。やはり、遠くに行って欲しくないようで弱々しくも私の腕を引っ張る七緒ちゃんに顔が綻ぶ。本当にいつまで経っても私の七緒ちゃんは可愛いんですから。

「七緒ちゃんどうしたんですかー?珍しくあまえんぼうですねえ、寝ぼけているんですか?」
「ん、寝ぼけてないよ」
「じゃあどうしたんですか?離してくれないとご飯作れないですよ」

掛け布団と枕の隙間からちらりと見える七緒ちゃんの可愛いお顔を覗き込んで目を見つめる。けれど、いつもなら恥ずかしそうに逸らされるその視線は逸らされることなく、大きな瞳で見つめ返された。

「行っちゃやだ。もう少しごろごろしてよう?」
「そんなのどこで覚えてきたんですか……!」
「何言ってるのさやかちゃん……甘えられるようにしてくれたのはさやかちゃんでしょう?もしこれがいけないことなら、さやかちゃんの所為だよ」


16/10/28

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