いつもとは違う昼休み。なかなか捕まらない七緒ちゃんと昼食をとるために、私は朝日奈さんと大神さんに頼んで代わりに彼女を呼び出してもらっていた。
以前の事もあり、朝日奈さんは快く了承。大神さんも多くは語らなかったけれど、応援してくれているようだった。

そろそろ時間かな、とスマートフォンを取り出し時刻を確認していると、七緒ちゃんの髪色に似た何かが視界を掠める。そちらに視線を向ければ、まさに今踵を返した彼女が此処を去ろうとしている所だった。

「こんにちは、七緒ちゃん」

運動音痴な彼女に追いつくのは容易く、後ろから声をかける。突き飛ばして逃げる程嫌な事をされた相手とはいえ名指しで挨拶されたのでは、再び逃げるわけにもいかなかったのだろう七緒ちゃんは、「一緒にランチしませんか」という私の言葉に振り向いた。
何がどうしたのか、突然彼女は赤い顔で口元を押さえる。それがなんだか小さな子供のようで、好きだなあと思う。

「ごめん、約束があって」
「朝日奈さんと大神さんなら来ませんよ?」
「……へ?なんで?」
「七緒ちゃんと二人きりで話がしたいと言ったら、快諾してくれました。なので……今頃トレーニングでもしてるんじゃないでしょうか」

「聞いてないよ」とでも言いたげに、涙目になる七緒ちゃん。少し俯いているからか、若干上目遣いの彼女の視線は私の心を打ち抜いた。もう可愛すぎです七緒ちゃん!
そんな事を考えていたら居ても立っても居られなくなって、七緒ちゃんを抱きしめてしまいそうになる。辛うじて彼女の両肩を掴む事にシフトチェンジできたけれど、本当に危なかった。ここでそんな大仰な事をしでかしてしまっては目立ち過ぎる。

「今日こそは逃がしませんよ」
「逃げないよ。ごめんね、一緒に食べようか」







「美味しそうですね……」

最初はお弁当の事を言っているつもりだったけれど、次第にその下の絶対領域に目が奪われる。
好きな人のことはなんでも知りたいと思うのは普通だとわかるけれど、このニーハイソックスの中に手を入れた感触が知りたいとか、そうした時の七緒ちゃんの反応が知りたいと思うのは普通のことなのだろうか。

「舞園さん?」
「なんでしょう七緒ちゃん」

霧切さんがいつか言っていたように、私の下心がバレたのではないかとどきりとしたところを笑顔で誤魔化す。するとどうだろう、七緒ちゃんははにかんで頬を赤らめた。どうやら、まだ私の事を好いてくれているようだった。

けれど、そのせいで私の我慢が限界を迎える。七緒ちゃんは本当に可愛すぎ、です!

「くすぐったいよ、舞園さっ……ん」

まずは指を一本ずつ入れその感覚を楽しんだ。私よりも柔らかい太ももとニーハイソックスの締め付けはなんとも気持ちが良く病みつきになりそう。
次に手の平全体で味わうように触れる。刹那、七緒ちゃんがびくりと震えた。その可愛い顔を見ながら触るその太ももは格別で、少し汗ばんでいるのか元々なのかわからないけれど、しっとりと吸い付いてくるようだった。

「だめだよ舞園さん!」
「何故ですか?」
「友達同士でこんなこと良くないよ」

自分で発するよりも重い友達という言葉に押しつぶされかける。以前私は自分が背負うものの大きさに……なんて考えたけれど、友達という言葉の重さの方が、大きさの方が、よっぽど痛いことに気付いてしまった。

……私は、彼女と、七緒ちゃんと恋人という関係になりたい。あの時アイドルを目指したように、彼女への大好きも貫き通したい。それがこの気持ちに対する精一杯の誠意だと思うから。

「じゃあ、恋人同士になれば問題ないです!」

わがままかもしれないけれど、アイドルも続ける。
希望ヶ峰に編入する前後の私が聞いたら卒倒してしまうだろうけれど、将来的にこれが原因で私がダメになったらアイドル舞園さやかはそこまでだったというだけだ。

舞園さやか。アイドル頑張ります。


16/8/25

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