「千崎さん、変態がうつるから彼女からから離れた方がいいわ」

私の左腕に絡みつくアイドルを指差すと淡々と霧切さんは言い放った。
しかし既に、離れようと力を尽くし切ってしまっている場合はどうしたら良いのでしょう。
そんな助けを乞う私の視線に霧切さんは気付くはずもなく、遠慮がちに私の右手首を掴む。……あれ、おかしいな。

「何言ってるんですか霧切さん。霧切さんの方こそ変態じゃないですか!私知ってるんですよ。霧切さんが七緒ちゃんのパン……とにかく!私の七緒ちゃんに触らないでください!」

そう言って私の腕をぎゅっと抱きしめる。ねえ、待って。パンってなに?私のパンって何?
視界の左上でちらついていた舞園さんの顔を見上げ必死に訴えるものの、アイドルにあるまじき表情になった顔を片手で覆うだけで話にならない。
なんとなく理由がわかってしまい、彼女との微妙な身長差を恨まざるを得なかった。

「変態なのは否定しないのね」
「だって仕方ないじゃないですか。こんなに魅力的な肢体を差し出されたら誰だってまさぐ……触りたくなるってもんです!」
「そうね、それは仕方がないわ」

平然とした顔でなんて事を言うんですか、霧切さん。けれど「でも、それとこれとは話が別よ」と真剣な顔で改める。
やだ、イケメン……傾きかけた信頼が元に戻ったような気がした。

「千崎さんはあなたのモノではないわ……私のモノよ」

……気のせいでした。

最初こそ遠慮していた私の右腕を掴む霧切さんの手も、今や舞園さんと同じように胸に抱えられており、まったく身動きが取れない。
体がこんな状態なのだから、本来は口でどうにかすべきなのだろうけれど、先程から「あ」とか「う」とか「え」しか言えていない私にこの二人を言い負かすなんてできるわけがなく、いつ終わるのかわからない争いに一人ため息を吐いた。


14/4/16

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