櫛枝実乃梨


告白 〜実乃梨の場合〜


「実乃梨っ、聞いて!あたし、好きな人が出来たよ!」

水分補給をしようと、スポーツドリンクの入ったペットボトルを傾けた、その時。
私の名前を呼ぶ、大きな声が。
しかもその主が私の想い人であったため、私はそのまま固まる。

「み、実乃梨っ。こぼれてるこぼれてる!」
「うおぉ〜!いけねえいけねえ!」

こぼれた量は半端なく多かったが、制服やら何やらは然程汚れずに済んだ…のだが。

「実乃梨、大丈夫?」

なまえは私が座っていた椅子の前に屈み、ハンカチを手に上目遣いで見上げてきた。
触れられた所がだんだんと熱を帯びてくるのがわかる。
…な、なんだよコレ。

「っ……」
「実乃梨?」
「なまえ……す…好きな人っ、できたん……だって?」

知りたいけど、知りたくない。
そんな気持ちが交差して…けど、やっぱり知りたくて、私は必死に出ない声を押し出す。

「う、うん…さっき、気付いたの!あたし…その人のこと、だいすきなんだって」

最初は動揺してたのに、なまえは徐々に幸せそうな表情になる。
私はそれを見て胸が締め付けられた。
だから…私はそれを隠そうと「応援するよ」と思ってもいない言葉を口にする。

「実乃梨…いいんだよ、応援しなくて」

だって、あたしのだいすきな人は…実乃梨だもん。
白い頬を朱に染めて、彼女が紡いだのは…そんな言葉。
その姿が可愛くて、可愛くて、私は透かさずなまえを抱きしめた。


09/7/28

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