それは小さな背徳感


「マスター、起きて…!」
「ん…みく?」

小さい子どものように目を擦りながらベッドの上で女の子座りするマスター。
私の名前のあとに、おはようと続けたもののどこか呂律が回っていない様子。

とりあえず起こしたし…と思い、朝食の準備を再開しようと寝室を出ようとするが、
それはマスターがエプロンをちょこっと掴んで「待って…」と言ったことにより阻まれる。

「いっちゃやだ」
「(マスター…可愛いっ!)」

顔に熱が集中するのがわかるくらいきゅうんと胸が締め付けられた。

「ごめんなさい」

一瞬でもマスターにそんな感情を抱いてしまったことについ謝罪の言葉が口から零れ落ちる。
しかし、そんな言葉とは裏腹に彼女のいるベッドの上へ逆戻り。
私のエプロンを掴んでいた方の腕を引き抱き寄せた。

「マス「みく、名前で呼んで…」
「…なまえ」
「えへへー、みくみく!」
「?」

嬉しそうにに私の名前を呼ぶマスターを不思議に思い様子を窺おうと密着していた身体を離そうとする。
けれど、マスターはそれを許さなかった。
今まで以上に密着する私とマスターの身体に、思考回路がオーバーフローしそうになる。

「なまえ…っ、もう…!」

離れてください!と肩を押して突き放そうとするが、それよりも前にマスターの唇が私の耳に触れた。

「大好き」
「…っ!?!?」

耳元で紡がれたその言葉に…身体が反応する。
さっきまでとは違う艶やかな声色、すぐにからかわれているのだと理解するけれど、私だって負けていられない。

「きゃっ…ミ、ミク?」
「マスターが…なまえが悪いんだから!」

そう言って私はマスターの首筋に顔を埋めた…










10/5/2

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