素直になりたい


あれから1週間ほど。
なまえはクラスの男子からお昼に誘われる事はほとんどなくなり、平和に過ごしていた。

「思ったより早く落ち着いたな」
「そうだね……でも、ちょっとさみしいかも」

「変かな?」そう言って苦笑いするなまえ。
それは竜児から見ても痛々しく、咄嗟に腕を掴んでしまう。

「きゃっ」
「あ……わ、悪い」
「ううん、びっくりしただけだから大丈夫」

なまえの腕は、竜児とは違って細く……簡単に折れてしまいそう。
いつの間にか生じていた男女の違いに、恥ずかしくなった竜児は、熱くなった顔を隠すように俯いた。

使用禁止の時間帯の自動販売機前に、校則違反者が二人。
竜児はミルクティーを買うとなまえに差し出す。

「おまえ、ミルクティー好きだったろ」
「うん……えへへ」
「な、何だよ気持ちわりぃ」
「りゅーじが覚えててくれた」

そんなことでニヤけんな。竜児はそう言ってなまえの額を小突く。
しかし、そんなことを言いつつも竜児も嬉しかった。
幼馴染みとはいえ、お互いがまだ小学生だった頃の付き合い。
久しぶりに合ったなまえは見違える程に大人っぽく成長。
そんな幼馴染みの昔と変わらない面を見たら、誰だって嬉しく思うだろう。

「こんな所でいちゃつくのやめてくれなあ〜い?亜美ちゃん恥ずかしくて見てられなあ〜い」
「ったく、またおまえかよ」
「や〜ん、高須くんってばつ・め・た・い〜」

突然現れた亜美に竜児は大きくため息を吐く。
媚びるようなその態度は、久々に見たせいか竜児には気持ち悪く映った。

「あ、じゃっ……邪魔みたいだから私、教室戻るね!」
「おい、待「待って」

先に教室に戻ろうとするなまえに竜児が声をかけようとすると、思いもよらない人物に遮られる。
竜児は亜美が何かを企んでいるのかと思ったのだが、苦しそうな亜美の表情からするにそうではないようだ。

「え?」
「亜美ちゃんが……友達になってあげてもいいわよ」
「え?……うん、ありがとう」

亜美の言葉に最初は戸惑ったなまえだったが、すぐに笑顔でそれに答え、教室に戻っていく。
……亜美はといえば、なまえが見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。

「おまえ」
「らしくない、とか言うんでしょ?」
「バカ、ちげえよ。……なんつーか、ありがとな」
「はあ?……なんで亜美ちゃんが高須くんにお礼言われなきゃいけないわけ?」

「亜美ちゃんわかんなーい」亜美はそう言うと鼻歌交じりで来た道を戻って行った。
あいつ、ここに何しに来たんだ?と竜児は疑問に思ったが、そんな疑問も亜美がいない今訊くことはできない。

「("あたしと友達になって"って何で素直に言えないのよ、バカチワワ……)」


09/2/7

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