冗談扱いの恋


今日は久々に生徒会の集まりもない休日。
あの鬼生徒会長に会わずに済む最高の一日だ。

「あー!幸せだあ…!」

家に誰もいないのをいいことに、俺は大きな声で叫ぶ。
一人は気が楽でいい。

「何が幸せなの?」

…もう一度言う、この家には誰もいない…いないはずなのだ。それ、なのに今、俺ではない誰かの、それも聞き慣れた声が…

「さ、さささささ三郷!?」
「うるさいわよなまえ」
「なまえって呼ぶな!」

会長ならピッキングくらいやってのけるだろうとは思っていたが、それがこの俺の家で実行されるとは、な。
あああ、頭痛が…。

「ピッキング?人聞きの悪い…」

ちゃんと鍵を使って入ったわよ。
目の前でそれらしき物をちらつかせそう言う会長。
というか、人の心を読むんじゃありません!

「これ…お袋の鍵」
「そうよ、お母様から預かったの」
「はあ??」

お母様!?
というかお袋のやつ何を考えて…って、あああ、そうか。
こいつぁ天下の生徒会長様だもんな!
親受けはいいに決まってる…。

「つーか、お前は何しに来たわけ?」
「なまえのお世話をしに来たの」
「…は?」
「あら、聞いてないの?貴方のお父様とお母様、今日から一週間旅行に行くそうよ」

あいつら…
いい年こいて年中いちゃついてるだけじゃ飽き足らず今度は二人だけで旅行だと!?
しかも一人息子に伝えずこの女になんて物を渡してやがるんだ!

「彼女って言ったら簡単にくれたわ」
「彼女って…お前なあ!」

真っ直ぐ三郷に見つめられ何も言えなくなる。
なんだよこれ…!

「…なんか、すまん」
「なに?やっと認めてくれた?」

俺の頬に手を添えて顔を近づけてくる三郷。
肌綺麗だなー…って、そうじゃねえ…!

「おまっ、いい加減にしろ!」

大きな音を立てて座っていたソファから立ち上がる。
何だかわからないと言いたげに三郷は俺を見上げた。

「いつもいつも俺をからかいやがって!」

お前は何が目的なんだ。
俺で遊んで何が面白いんだ。
日頃から思っていた不満をぶつける。
大体生徒会本部になんの関係もない俺を引っ張り込むのもおかしいだろ?

全て言い終えると三郷は何とも形容しがたい表情で俺を見ていた。

「本当に鈍感なのね、まあいいわ」

気付かないのなら気付かせてあげる。
三郷は俺の耳元でそういうと、小さく微笑んだ。

そして…
「んぐ!?」
唇を…奪われた。

「な、ななななななな何するんだ!!」
「何って、気付かせてあげたの。…これで気付かないなんて言ったら殺しちゃうかもしれないわね」
「え…お前、俺の、こと…?」

「なまえ、今から昼食作るけど何がいい?」


10/4/11

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