ひとときの逢瀬
昼休み、図書館のとある空間。
そこに私ことみょうじなまえ、そして、泣く子も黙る星鐡学院生徒会長三郷雫がいた(漢字ばっかで読みにくいとか言うなよ)。
普通なら会長と二人きり同然のこの状況はありえないのだけれど、私は特別だった。
…白状してしまうと、私と雫は恋人同士なのだ。
「会長」
「雫」
「会ちょ「雫」
だからなのか、私が"会長"と呼ぶと雫は自分の名前を呼ぶようにと正してくる。
校内でなければいくらでも呼ぶけれど、図書館と言えど私には恐れ多くて無理…
「雫」
だったはずが、射るような彼女の視線に負け私は名前を読んでしまった。
…ああ、色んな意味で弱すぎる自分に絶望。
「よろしい。…それで、なんの用?」
雫のその言葉に私は固まる。
ちょっと待てそれはどういう意味だ。
本を読んでる私を刺すように見てたのは雫だろう!
「どういう意味?…それはどういうことかしら」
よくわからないわ。
とでも言いたそうに肩をすくめてみせる雫(…あ、外国人みたいだ)。
わからないのはこっちだ、このやろー。
「私と二人でいるのは退屈?」
恋人といて退屈ってのはないだろう。
「退屈っていうか、疲れた」
いや、疲れたもないよなあ。
「失礼ね」
私の言葉に少しは傷付いたようで、彼女は拗ねたようにそう言う。
…可愛いって思ったのは内緒だぞ。
「それでなまえ、さっきの続きなんだけれど…」
切り替えが早い。
雫はさっきのことを忘れてしまったかのように切り出した。
…やっぱり、言わなくてよかった。
「……というわけで、キスしない…?」
「はああああ!?」
いやいやいや!
どういうプロセスでその結論にたどり着いたわけ!?
ちゃんと聞いてたけどいきなりとんだよね!?
なまえさん、びっくり!
「なまえ…うるさいわよ、そんなに口を塞いでほしいの?」
ほら、紅音が見てるわ。
その言葉に私はカウンターの方へ視線を向ける。
あ、ほんとだ…美嶋さんが怒ったような顔をしていらっしゃる。
でもね、これはこの会長様がいけな…はい、ごめんなさい。全面的に私が悪いです。
「ねえなまえ」
「ん…?」
「生徒会室にいかない?」
「…?なんで?」
「それくらいわかるでしょう?」
二人きりになりたいの。
耳元でそう言われ、身体がびくっと震える。
雫の暖かい吐息がとてもくすぐったかった。
「ほら、行きましょう。まだ時間はあるから、ゆっくり…ね?」
09/12/16