強く求めて欲しいのに


「あっつーい!」

キャミソールにショートパンツというがっつりとした部屋着。
そんな姿で643号室でくつろぐのは、恋人のみょうじなまえその人。
肌色の面積が多いせいか、目を合わせるのもままならず、私の目は泳ぐばかり。

「冷凍庫にアイスあるから食べていいわよ」
「ほんと?やった」

手元にある宿題をじっと見つめそう言うと、
嬉しそうになまえは立ち上がり、キッチンへ向かった。

背を向け本人が気付かぬ隙に、自然と視線はむき出しになったその綺麗な脚へ動く。
私の根性無し!バカ!アホ!ヘタレ!

「明日菜はー?」
「さっき食べたからいいわよ」
「わかったー」

さっきから落ち着きのない心臓。
音が大きすぎてなまえに聞こえてしまうのではないだろうかと心配になり、そしてそのせいでさらにどきどきして心臓の鼓動も大きくなる。
ああ…!なんて悪循環!

「明日菜大丈夫?全然進んでないみたいだけど…」

見せてあげようか?
扇風機の近くにいるのか、なまえの声が震えて聞こえてくる。
それがなんだかおもしろくて、私は小さく笑った。

「あ!今笑った?何笑って…ぁっ」
「っ!?」

突然聞こえた艶やかななまえの声。
その声が引き金となり、初めて肌を重ねたあの日のことが脳裏をかけめぐる。

「冷た…。あ、ねえ明日菜、ティッシュ取って」

手元にあるティッシュを持ち、なまえに手渡す。
冷たい。その一言でなんとなく予想はついていたけれど、実際目にすると身体に毒だ…!

白くて綺麗な太ももに、それよりももっと白い液体がつうっと一筋。
め…めまいが…。

「ねえ明日菜、これ…なんかえっちじゃない?」

言うなばかああああああ!
この状況に我慢できる気がせず、私は走って逃げ出した。



「いい加減気付いてよ。バカ、アホ、ヘタレ」


09/8/19

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