背中越しに感じる


とある夏の日曜日、以前から想いを寄せていた秋山澪とデートの約束をつけていた日。まあ、向こうからしたらただ遊びに行くだけかもしれないけど、あたしにとってはとっても重要で、とっても嬉しいことなのだ。
なのに…なのに、澪ときたら…

「遅刻かよ…」

ふざけんなふざけんな!
電話しても留守電だし、メールも返って来ない。
文明の力なんてくそくらえ!(あ、女子がくそなんて言っちゃだめだ)

でも…良く考えたら澪が遅刻して連絡もないなんておかしい。
何か、あった…?
急に不安が押し寄せて来て、あたしは走り出した。
澪の家からこの待ち合わせ場所までは歩いて十分くらい。…走ったら、もっと早く着く…!

「はぁ…はぁ、はあ…っ」

こんなに真剣に走ったのはいつ振りだろうか、慣れないことをしたせいか、動悸と息切れが激しい(どこのおばさんだっつの…)
ある程度落ち着いてから秋山家の敷地を跨ぐ。

澪のお母さんに挨拶をし、家に上がらせてもらった。話に寄れば、澪はまだ部屋にいるらしい。なんだよなんだよ、結局走り損か!…まあ、澪に何もなかったのは良かったけどさ(あ、今恥ずかしいこと言った)

ノックを数回し、ドアを開いて中を覗き見る。すると、アンプに繋がったベースを抱えて歌を口ずさんでいる澪の背中が見えた。…良く見ると、大きなヘッドフォンもアンプに繋がっている。

「ばかみお」

聞こえないのをいいことに、あたしは澪を軽く罵ってやる。なるべく気配を殺し、彼女の後ろに座った。
わあ、まじで気付かないよ…。
と内心かなり驚きながらも、何か悪戯してやりたい衝動に駆られ、澪の首に手を回した(あれ、あれ、あたしなにやってんだ?)
自分の意思とは裏腹に、勝手に動く身体に戸惑う。どうしよう、これは非常にまずい。
このまま流れにまかせるのも有りかな、
なんて思い始めてきている…。

「なまえ…!?な、なにしてるんだ…?」

澪は身体をびくっと震わせ、焦ったようにヘッドフォンをはずす。小さく抵抗しながらも耳まで真っ赤なのは、何で…?期待して、いいの…?

「本気で嫌がらないと、やめないよ」

あたしはそう言って澪の首に回した腕に力を込めた。






背中越しに感じる

(い…いぞ)
(澪、好き)
(っ…)


09/6/28

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