たとえ、それが勘違いでも


先生に呼び出され、説教を受けていた職員室から教室に戻ると、珍しい人物を見つけた。

「フェイトちゃん」
と名前を小さく呼ぶと、吃驚したようで彼女は小さく肩を震わせ小さな声で私の名前を口にする。
ああ、かわいい声だなあ。

私が前の席に跨って座ると、彼女は顔を赤く染める。
あれ…?と不思議に思ったが、よくよく考えればいつものことだった。
うん、そういう子だよね、フェイトちゃんは。
でも、それにしてもおかしかった。
確かに手と足を同時に出して歩いてたり、変な様子の時も偶にはあったけれど、今日も十分に変だ。

「フェイトちゃん、どうしたの?今日、変だよ」
「え?へ、へへへ変じゃないよ!」

ふう、と小さく息を吐き
さっきから気になってたことを口にする。

「だって、そこ間違ってる」
「え?」
「ほら、ここ」
「え?え?」

はあ、フェイトちゃんって私より遥かに頭良いはずだよね?
…だって、私なんて職員室に呼び出されて説教されるくらいだし。

私はフェイトちゃんに気付かれないようにため息を吐き、座り方を変えて軽く身を乗り出す。

「なまえ?」
「何?」
「その…近いっ」

あれ、やっぱり変。

「あ、ごめ…」
「あ…」

私が謝り終わる前にフェイトちゃんが声を漏らす。
揺れる大きな瞳が不安げに私を見ていた。

へんなのは…フェイトちゃんじゃなくて…わたしかもしれない。
ああ、…だめだ。

「フェイト…ちゃん」

真っ赤になった彼女の頬に片手を添えて顔を近づける。

「なまえ…?」
「目、瞑って」
「え…」

私がそう言うとフェイトちゃんは目を瞑る。
力いっぱい目を瞑っている姿が私の目には可愛く映る。

「どう、したの…?」

フェイトちゃんの声で私は我に返った。
何…しようとしてるんだよ、私。

「え、あー、…目に、ゴミが…」

だからそんなに力入れないでと続けようとすると…

「っ…ばか」

目を開けた真っ赤なフェイトちゃんに言葉を遮られる。
しかも、その言葉は馬鹿なんて…そんな言葉。

「え?な、なんで?」

フェイトちゃんの言葉を"ない"頭で理解しようとしていると、唇になにか柔らかい感触。
えと、今のは…フェイトちゃん…だよね?

「あんまり…期待させるようなこと、しない…でね?」

息を切らしながら言うフェイトちゃんの顔はやっぱりあかい。
フェイトちゃんって…、





たとえ、それが勘違いでも

(フェイト)
(な、なに?)
(すき、だよ)


09/4/14

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