口にしなくても伝わる


「好きや」

いきなり口を開いたかと思えば、突然の告白。さっきまで意地でも開くまいと口を真一文字に閉じていたのに、一体どんな心境の変化だ。
こんな可愛い子に告白され、本当なら泣いて喜びたい所だが、立場上そうはいかなかった。

「ありがとう」
「何か言ってくれへんの?」

「木乃香が補習なんて珍しいな」すぐに言い返されると思ったが、いつまでたっても彼女の声が聞こえてこない。それが心配で、彼女の様子を窺う。

「木乃香?」
「断るなら口にせんでええよ。……聞きたない」

前から俺にベッタリくっついてきたのはこういうことだったのか。そりゃあ、女の子に告白されて悪い気になるやつはいないさ。だがこれは、何度も言うようだが立場上良くないこと。
だが、それ以外に断る理由もなければ、付き合う理由だってない。つまるところ、何とも答えられないわけで……。でも、何も言わなかったら断ったことになるんだよなあ?

「俺とお前は生徒と教師なの。……わかる?」
「わかりたない」
「じゃさ、こういうことにしない?」

「木乃香が卒業して、気持ちが変わってなかったらまた言ってくれ。……俺、考え直すから」それでも木乃香は俯いて黙ったまま。

「う、うち……」
「ん?」
「断るなら聞きたないて言うたやんっ」

最初は怒ってるのかと思ったが、木乃香の顔を見るとそんなことはなく……。
やがて木乃香と目が合うと、木乃香は顔を紅潮させた。
うわ、可愛い。

「うち、帰る」
「お、おい待てよっ」

最初のうちは木乃香を止めたが、視線を下に落とすとそこには合格点を余裕で超えたプリント。追いかける理由がまだない俺は、机に突っ伏してため息をついた。

もし、その理由ができたなら、木乃香をどこまでも追いかけようじゃないか。


07/8/19

 top 
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -