たまには悪くない


「みょうじー!!」
「わ、わりぃっ!まじごめんって」

俺はキョンに追いかけられてた。
理由?そんなの決まってるじゃないか。



――…

今日は、俺が掃除当番の日だった。
だがそんなこと、この俺がやるはずもなく…。



「ピッチャー、大きく振りかぶってええー、投げましたっ」

丸めて投げた雑巾が教室の壁にぶつかって落ちる。

「てめ、何でそんな速ぇんだよ」
「はあ?これが速いだあ?何言ってんのお前」
「だあー!悔しい。ぜってー打ってやる!」

ハルヒコはそう叫ぶとバット代わりの箒を俺に向ける。

「やれるもんならやってみろ!三振させてやるよ」
「よっしゃ、こい!負けた方昼メシ奢りな!」

箒を握り締め、気合十分のハルヒコ。
かなりハルヒコに有利な勝負だが、俺はぜってー負けねえ!

さっきと同様に大きく振りかぶる。
今までで一番速く指から離れた雑巾。だがそれは、風の抵抗で丸い形が崩れ、教室のドアに向かって飛んでいく。

「「あ。」」

見事なまでにハルヒコと声が被る。
何故なら、廊下に飛んでいくはずの雑巾が…キョンの顔面に…直撃したからだった…。

「……」
「お、おい。大丈夫か?」

雑巾が床に落ちても尚無言のキョン。
それが無言の怒りだということに気づくのには少しかかった。

やっべ、とりあえず逃げろ、俺。
ハルヒコが声をかけているうちに俺は走り出す。
少ししてからハルヒコの奇声が聞こえたがそんなことは俺の知ったことではない。
俺は今までにはないくらい、死ぬ気で走った。
少し力を抜いたくらいで女のキョンが追いつけるとは思わなかったが、死ぬ気で走った。
ああ、捕まったらどうなるんだろうな…。
そんなことを考えているとキョンの声が聞こえてくる。
そこから冒頭に戻るのだ。

「みょうじー!!」
「わ、わりぃっ!まじごめんって」

っつーか、なんであいつあんなに早ぇんだよ!
全力で走っているはずなのに俺とキョンの距離が離れることはなかった。
むしろ、近づいてる気が…。

廊下の曲がり角からいきなり現れた一般生徒にぶつかりそうになり、ややスピードを落とす。
数秒間キョンの足音が止んだため、振り返ると、縞々ぱんつが…飛んできた。

「ぐえっ」

刹那、カエルを押し潰したような何とも言い難い声が自分の口から漏れる。
つか、しましまって…。



――…

俺はキョンのドロップキックを顔面で受け止めて気絶したらしく、気付くと保健室のベッドの中にいた。

「私は悪くない」
「ああ、そうかよ」

まだ痛む鼻をさすりながらキョンに言ってやる。
あんな汚ぇもんぶつけたんだから俺が悪いに決まってる。
(って…、あれ?俺も汚いもん顔面にくらった?)

「それより俺は、縞々ぱ「わっ忘れろ!」

忘れられるか。
だって、縞々だぞ、し・ま・し・ま!

「色気のいの字もねぇな」
「うるさい!」
「ちなみに俺は白が好きだ」


「知るか!黙れ!」


09/4/26

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