やきもち


「かわいいわね」

真剣な声色で何を言うんだ!と思い振り返れば、そこにはみょうじさんがいた。
妙に納得してしまうのは、きっと…。

「私、みょうじなまえ。あなたは?」

私の隣にいた一姫を見据えて、いきなり自己紹介を始めるみょうじさん。
この人はすべてにおいていきなりってのが多い気がするが気のせいだろうか。

「古泉一姫です。貴女のお噂は兼ね兼ね…」

にこやかに一姫が言葉を返すと、みょうじさんは整った顔を歪める。
というか、一姫も少しくらい驚いてくれ…。

「うわさ…?何のことかしら」
「いえ、お気になさらず」

一瞬一姫は驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの笑みにすり換える。
みょうじさんの自分に鈍感なところは、少々驚かされるところだ。

「(驚くようなことばっかりだな、この人は…)」
「…大きいのね」
「そうでしょうか、なまえさんも中々…」

小さくため息を吐くと、何やらわけのわからない会話が聞こえてくる。
俯いていた顔を上げると…

「っ…!おまっ、おまえら何やってんだー!」
「何って…ねえ?」

みょうじさんは一姫とアイコンタクトをとると小さく笑う。
やめるつもりはないらしく互いの胸に手は当てたままだ。

一姫の手によって形を変えていくみょうじさんのソレ。
何て言うか…羨ましい。…っ!さ、触りたいとかじゃないぞっ!?
大きさだっ!大きさ!…って、私は何を言ってるんだ。

「キョン子さんも触りますか?」
「い、いや、遠慮する」

心を読まれたのかと思い心臓が激しく鼓動する。
な、何動揺してんだ私。
胸に手を当て落ち着くまでこうしていようと目を閉じると私を呼ぶ声が聞こえる。

「キョン子ちゃん。…もしかして、やきもちかしら」

目を開けると、人差し指を自分の唇に当てているみょうじさん(一姫はいつの間にか消えていた)。
少し落ち着いていた心臓がどくんと大きく脈打つ。

「なっ」
「大丈夫、」

私には…キョン子ちゃんだけだから。
そう言ってみょうじさんは、自分の唇に当てていた指を私の唇に軽く押し当て、綺麗に笑う。
それを見た私は一瞬くらっとした。

どうしよう、
やっぱり…好きになってしまったみたいだ。


09/4/6

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