神様への宣戦布告


授業中、ふと外に目をやると隣のクラスがサッカーをしているのが目に入る。教室の中まで聞こえるくらいの明るい声。…その中でも一番耳につくのは女子たちの黄色い声だった。
最初はミーハーな女子が男子の活躍を見て騒いでいたのかと思ったが、声を上げている女子の視線の先には、一人の女の子がいた。

確か…名前はみょうじなまえ。
長くて真っ直ぐな黒い髪。この上なく整った目鼻立ち。
…とにかく、えらい美人なのだ。みょうじなまえという人は。




――…

授業が1つ終わると後ろの席のハルヒコが急に立ち上がった。昼休みでもないのに今度はどこ行くつもりなんだ。まあ、私には関係ないけど。
だが、そう思っていたのは私だけのようで、廊下にいるハルヒコに声をかけられる。ていうか、キョン子って言うな!

「現国の教科書貸せ」
「は?あんた何言って…」
「コイツが貸してくれってんだけど、生憎俺は今持ってねーの」

ハルヒコがコイツと言うと同時に、その人は私の死角から顔を出した。
笑顔でどうも。という彼女は、さっき私が見ていたみょうじなまえさんだった。
って、ええええ!?コイツと付き合って…?

「付き合ってるわけないじゃない。私は嫌よ、こんな男」
「俺だって嫌だな、お前みたいな女」

顔を限界まで近づけ、睨み合う美男美女。
こんなのはどうしたって痴話喧嘩にしか見えない。…泣けてきた。

「というか、私は2人が付き合ってるのだとばっかり…」

ニコニコと笑いながら、楽しそうにハルヒコを見ているみょうじさん。
少しずつ寄っていく眉間の皺を突くなどして遊びだした。

「付き合うわけないだろ、団員その1だぞ?」
「ふーん」

みょうじさんはハルヒコに見えないように含みのある笑みを浮かべ、

「じゃあ…」

私が付き合っちゃおうかしら。
と私の腕を胸に抱きしめた。
って、何言ってんだこの人は、冗談も大概にして欲しい。

「何言ってるのキョン子ちゃん。私は最初から本気よ」

そう言うとみょうじさんは、私の顎に手を添えて頬にキスをした。限りなく、唇に近い位置に。ハルヒコの見ている前で。

「じゃあ、これ借りてくね。ばいばい」

私に笑顔を見せ、ハルヒコに舌を出して見せると彼女は颯爽と去っていった。
ハルヒコがわーわー騒いでいるが、それが聞こえなくなるくらい私は硬直していた。

08/8/22

 top 
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -