彼の優しさ


ある日の午後。授業も無事に終わり、文芸部へ向かおうとしていた。

「なまえ」

しかし、不意に名前を呼ばれる。
…振り返ると、そこにはハルヒコがいた。
あれ、ハルヒコって掃除当番じゃなかったっけ?

「あー、キョンに代わってもらった」

…って、今完璧に忘れてたでしょ。
かわいそうなキョンくん。

これから部室か?
私が何も言わずにいるとハルヒコは顔を近づけてそう問うてきた。
いつものことだけど、やっぱり慣れない。
顔に熱が集まるのがいやでもわかった

「お前やっぱかわいいな」

ハルヒコはそう言うと、私の赤くなった頬をつつきながらバカにしたような笑みを浮かべる。
からかってるのはわかってるけど、顔の火照りと嬉しさは止まらない。
それが恥ずかしくなった私は、ハルヒコに背を向けた。

「今日はSOS団休みだぞ」

え…?
驚いた私は恥ずかしさを忘れハルヒコの方を向く。

つーか、今決めた
そんな言葉に、ハルヒコらしいなあ…と思いつつも、そっか。と返事をする。

不意にハルヒコの手が私の手に触れると、それを合図に…私たちは手を繋いだ。

「じゃ、帰ろっか」
「おう」

男の子特有の大きくてゴツゴツしたハルヒコの手はとてもあたたかい。
手が暖かい人は心が冷たいなんて言うけど、私はそうは思わない。だってハルヒコは…



――…

「うし、乗れ」

駐輪場から探し出した自転車に跨り、ハルヒコが言葉をかけてくる。
その言葉に私が、今日はハルヒコが後ろね。と言うと、ハルヒコは口を半開きにして、は?とでも言いたそうな表情になる。

「ちょっハルヒコ、なんて顔してんの。面白すぎ」
「…うるせえ、お前は俺の後ろに乗ってりゃいーんだ!」

私がハルヒコの言葉を無視していつまでも笑っていると

「ひゃうっ」

両脇を掴み持ち上げられ、

つかまっとけ、落ちるぞ、と。
有無を言わせずに走り出した。



「私もこぎたかったのにー…ハルヒコのばか」
「バカはお前だ」

久しぶりの2人乗り。
私はハルヒコのお腹に手を回して横座り。

「何でだめなの?」
「んなの、……だからだろ」
「え?」
「そんなみじけえスカートはいてるやつに誰がこがせるかよ!」
「ふふ」
「…んだよ」

あたしなんかより、ハルヒコの方がかわいいよ。
真っ赤になったハルヒコの耳を見つめながら小さく呟く。
ほら、手が暖かくても…ハルヒコはこんなにも優しい。



「ハルヒコ…だいすきっ!」


09/3/12

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