ゆらり、ゆれる


「ふふふ〜ん」

鼻歌を歌いながら角砂糖で遊んでいるこの上級生。
これで志摩子さんより年上で、紅薔薇さまや黄薔薇さまと同い年だというから不思議だ。

「というか、何故貴女がここにいるんですか?」
「あれ、迷惑だった?」

別にどうってことはないですけれど、私しかいないというのに何でここにいるのかわからなくて…。
それに、先輩方がくるのはもう少し先かと思います。
私はそう言ってなまえさまの前にいれたばかりの紅茶を置く。

「そうなんだー」

けれど、なまえさまにとってそれはどうでもいい情報のようで、
スプーンでくるくると円を描いて、カップの中の紅茶で渦をつくって遊んでいる。

「そんなことしてたら冷めちゃいますよ」
「いいのー、あたし猫舌だもん」
「だったら空気を含ませるように混ぜなきゃだめなんじゃないですか?」
「あ、そっか」

乃梨子ちゃんは頭がいいねぇ。
そう言うと、なまえさまは近くに立っていた私の頭を撫でて来た。

「ん?どした」
「い、いえ」
「あ、もしかして乃梨子ちゃんがふーふーして飲ませてくれるとか?」
「しません」

向かいに座り、ちぇーと唇を尖らせるなまえさまを横目に見る。
そんな姿を見ると、やっぱり年上には見えなかった。

「乃梨子ちゃん、つまらない?」
「え?」
「さっきから様子が変。あたし…いない方がいいのかな?」

そう言って立ち上がるなまえさま。
そんなことこれっぽっちも思っていないのに、声を上げて止めたいのに。

「…乃梨子ちゃん?」

気付くと私はなまえさまの手を掴んでいた。でも、声が出ない。
声を出してしまったら、自分のこの気持ちを認めてしまうことになる気がして。
それがすごく怖くて、怖くて、手が震えた。

「乃梨子ちゃん、どうしたの?」

なまえさまは震える私の手を強く握り締める。
私を撫でてくれたこの手。…手を握ってくれているこの手。
…っ!やっぱり、私…。

「私っ、なまえさまが好きです!」


09/8/13

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