愛するということ


いつからだっただろうか、気付くと私は聖のことが好きになっていた。
けれどそれは遅すぎて、聖の側にはもう…大切な人がいた。
本当なら奪ってでも聖を自分のものにしたいところ。
けど、私にはそんなことできるわけがなかった。
だって、聖の相手の人は私にとっても大切な友達だし、聖には幸せになって欲しいから。



そう思っていたはずなのに、私の想いはついに爆発してしまう。

「聖!」

彼女の背中に向かって大きな声で叫ぶ。
私は聖が振り返る前に後ろから抱きついた。

「なまえ…」

私を呼ぶ聖の声。
何かを悟ったような優しい声に泣きたくなる。
ああ、もう…後悔で押し潰されそう。

「聖…好き」
「……」

その言葉を聞いて聖は自分の身体に周った私の腕を掴んだ。
ここまできて何も言ってくれないなんて、辛すぎる。
堪えていた涙がまた目頭に集まるのを感じた。

「なまえ、大丈夫」
「え…?」
「私もなまえのこと大好きだから」
「……っ」

いつのまにか向き合っていた聖に手を強く握られる。

聖のその言葉が、この場限りの嘘でも、
気を遣って優しくしてくれるのが嬉しくて、嬉しくて…でも、すごく痛かった。

「ありがとう」
ごめんね



抱きしめてなんて言わない、だからこの手を離さないで。


10/3/10
(相手の幸せを願って身を引くのもひとつの方法)

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