花火が上がる、その前に
「金魚すくいって…あんた何歳ですか!?」
八月某日。
私は、佐藤聖さまと夏祭りに来ていた。
山百合会のメンバーでもない、ただの二年生の私が何故こんな有名人と一緒にいるかというと、不本意ながら、恋人同士だったりするからだ。
「なまえちゃんもやるー?」
「やりません!…って、話聞いて下さいよっ」
ポイを右手に無邪気に笑う聖さま。
可愛いですけど!…これって、デートなんじゃないんですか!?
「次あっち行こっ」
これじゃ、どっちが年上かわかんないじゃん…。
「たこ焼き、いる?」
「あ、はい。ありがとうございます」
突然、ぬぅっと伸びてきた手、その手には爪楊枝に刺さったたこ焼きがひとつ。
その手の主に目をやると、まったくいつ買ったのだろうと言いたくなるような、わけのわからないキャラクターのお面を頭に着けていた。
「花火まで、大分時間あるね」
「はい」
「私、人がいない穴場知ってるんだー。…行く?」
にぃ、と子供っぽい笑みでそう言うと、聖さまは私の右手を握った。
…え?て…手!?
「顔、真っ赤だよ」
「…っ」
「で、行くの?行かないの?」
「い、行きますっ」
時間はまだたくさんあるけど、もっと遊んでからとも思ったけど、
ここで断ってしまったら、聖さまが遠くに行ってしまう気がした。
――…
「うわあ…、すごいですねー」
確かに、聖さまの言う場所には人がいなかった。
屋台もないし、真っ暗だから今はいないんじゃないですか?
と聞くと、聖さまはそれをすぐに否定。
理由はわからないけど、まったくといっていいほどここに人が来ることはないらしい。
それから私たちは他愛のない話をたくさんして、花火が始まるまで時間を潰した。
すると、急にあることを思い出して…。
「(良く考えたら、聖さまと二人きり…。き、緊張してきた…っ)」
心臓が早く、そして大きく鼓動する。
それが聖さまに伝わったのか、ずっと握っていた手を更に強く握る。
「なまえちゃん…」
「(え、ええええ??)」
気付くと、聖さまで視界がいっぱいになっていた。
「聖さ「ごめん、なまえちゃんのことはゆっくり、大切にって決めてたのに…」
「いい…ですよ。…大丈夫です」
私のその言葉を聞いた聖さまは、ありがとう。と優しく微笑み、キスの雨を降らせる。
「ふぅ…ん」
「えっちな声」
「うるさっ…い」
「なまえ、好きだよ。これからも一緒にいようね」
「はい、聖さま……」
09/7/23