ahime'


私は今、近所のファストフード店へ向かって歩いていた。
本当なら加東さんに奢ってもらうつもりでいたのだが、見事に断られたのだ。
お店の中へ入ると、良く見知った顔が。

「あれ、なまえちゃん?今日は江利子と一緒じゃないの?」

その姿に声をかけると、彼女はあからさまに嫌そうな声で
「あ、聖」と、私の名前を口にした。
しかも、相変わらずの呼び捨て。
少しひきつる顔をなんとか笑顔に変える。

「江利子なら家だよ、私は兄貴たちから逃げてきたの」

勉強の邪魔をされるのが嫌なのか、興味のない話題は事務的な言葉しか返ってこない。

「ふーん、じゃあ私が教えてあげようか?」
「え、いいの?」




――…

そんなことを言ったはいいものの、ほんの数分でかなり飽きてきた。
自分の適当さにちょっと…否、かなり呆れてくる。
だからと言って、勉強を続けるのも嫌だから、気になっていたことを訊いてみることにした。

「なまえちゃんって、江利子のこと好きだよね」
「まあ」

前からわかっていたけれど、彼女も彼女でシスコンだった。
たぶん、なまえちゃんは江利子にしか心を許せなかったのだろう。

「じゃあ、私は?」
「…え」

なまえちゃんは嫌いな人とは一切かかわらないことを私は知っている。けど、気になった。理由は特にない。あるとすれば、彼女のことが好きだから。妹みたいに可愛がっている彼女に嫌われていると知った日には私はきっと、ショックで立ち直れない。

「なまえちゃん?」

しばらく待っても返事がないので名前を呼ぶ。
しかし、それでも返事がない。
え?あれ?これって…もしかして…。

「あ、あのっ…ご、ごめんなさい!」

耳まで真っ赤になった顔を背けると彼女は走り出す。
ああ…なにやってんだろ、私。














ahime'


明日からどんな顔して会ったらいいのだろう







08/12/24

 top 
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -