Veloce palpito


私は今、近所のファストフード店で参考書とにらめっこしていた。
本当なら家でやる予定だったのだが、クソ親父とクソ兄貴がうるさすぎて勉強をする気になれなかったのだ。

「あれ、なまえちゃん?今日は江利子と一緒じゃないの?」
「あ、聖」

問題を解き始めると、聖がいきなり現れた。

「江利子なら家だよ、私は兄貴たちから逃げてきたの」

私がめずらしく勉強をする気になったというのに、何故こんなにも運がないのだろう。

「ふーん、じゃあ私が教えてあげようか?」
「え、いいの?」




――…

そんな言葉を聞いて喜んでいたのはつい数分前。
少しは予想していたが、本当にこうなるとは思ってもみなかった。
…どうしよう。

「なまえちゃんって、江利子のこと好きだよね」
「まあ」

これじゃあ、いつになっても進まないなーと半分諦めつつ相槌を打つ。
…だって、無視したら面倒なことになりそうだし。

「じゃあ、私は?」
「…え(なに…、これ)」

突然のその質問。
にこにこした聖の顔をみると、胸がきゅうと締め付けられる。
聖のことも好きなはずなのに、喉まできたその言葉が外に出てくれない。
あれ…、あれ、…これじゃあ、私、聖のことが…!

「なまえちゃん?」
「あ、あのっ…ご、ごめんなさい!」

聖の顔をこれ以上見れなくて、その理由を認めたくなくて、私はただただ走った。










Veloce palpito
止まらない心臓の鼓動




08/11/25

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