holy terror
無性に吸いたくなった煙草を学園内の喫煙室で済ませ、私の学園生活の拠点となる保健室へ戻る。
部屋を出るときは消したはずの電気が点いているということは誰かが来たのだろう。
だけど今は授業中。よっぽどのことがない限り保健室には来ない。
――…
中に入るとカーテンの閉まったベッドが1つあった。カーテンを少し開けて中を見てみる。
「あ、せんせー、ごきげんよ…って、何で閉めるんですか!?」
中には今、一番会いたくなかった人物の姿。
何でこういう時に限って会うのよ。
というより、あの娘が私に会いに来た…?
「せんせっ」
ベッドから出て、満面の笑みを浮かべてそう言う佐藤聖。
むかつく程綺麗なその顔を見た私は不本意にも顔を赤らめてしまう。
「あ、せんせ可愛い」
「うるさいわね」
これ以上彼女と話しているとからかわれるだけ、だから私は佐藤さんに背を向けた。
「ひゃっ」
それがいけなかったのか、背を向けてすぐ首に両腕をまわし、抱きつかれる。
「ねえ、せんせ、…耳まで真っ赤だよ。」
「佐藤さ…ん、耳元で…しゃ、しゃべらないで」
「先生、耳苦手なの?」
甘く囁く彼女の声が身体の芯まで届く。
今までは気にならなかった彼女の声が、…少し意識しただけで何故こんなにも魅力的に感じるのだろう。
「やっぱり、先生が好き、なまえ先生が好き。」
「な、なんで私なのよ。」
「なまえ先生だから好きなんです。」
理由なんてありません。そういう彼女は、普段の表情からは考えられないほど真剣だった。昨日告白された時はすごくパニックを起こしていて気付かなかったけれど、あの時もこんな表情をしていたのだろうか。
「せんせ、返事はいつでもいいけど、あまり期待させないでね。」
さっきまでの真剣な表情はどこへやら。
佐藤さんはそう言うと離れていた身体を擦り寄せてきた。
08/1/10