歪んだ愛


「これ本当にもらっていいの?ありがとう!」

ここは二年藤組。
藤堂志摩子を尋ねてこのクラスに来ていた福沢祐巳はすぐ近くで行われている光景にただただ驚いていた。

「ねえ志摩子さん、あれ、いいの?」
「"あれ"?何のことかしら」
「なまえさんに決まってるじゃない」
「ああ、別にいいんじゃないかしら。"なまえがそれでいいのなら"私は構わないわ」

志摩子はふわりと綺麗に微笑むと、なまえに向けていた視線を祐巳へ戻す。
一方祐巳はいつもの百面相で、信じられないとでも言いたそうにしている。

「じゃ、じゃあ…宝探しには、参加するのかな…?」
「参加しないわよ」
「えっ、何で?」
「私が参加するなって言ったからだと思うわ」

その言葉に祐巳は「何故?」といった表情で志摩子を見つめる。
志摩子はそれを見てくすりと笑うと口を開いた。

「どんな場所に隠しても、なまえには見つけられてしまうと思うの」
「それでいいんじゃないの?」
「それじゃあだめ。誰が勝つか最初からわかってるゲームほど、楽しくないものなんてないじゃない」

「それに、デートならいつでもできるもの」そう言ってふふっと楽しそうに笑うともう一度なまえに視線を向ける。
下級生や同級生は勿論上級生からも人気のなまえは朝のうちだけで大量の箱を抱えていた。

「うわあ…、あんなのって本当にあるんだあ。でも…本当に良いのかなあ」
「あとで"大変な目"に合うのはなまえだからいいのよ、祐巳さん」
「あとで…?」
「ほら、来月のホワイトデー。あんなにもらってしまったらお返しが大変じゃない」

祐巳は気付かなかったが、この時の志摩子はとても意味深な笑みを浮かべていた。



――…

「…んぅ……ふっ…ぁ…んぁっ、しまこぉ」
「なあに、なまえ」
「ごめんってば、だから、ゆるっ…してぇっ」
「私が嫉妬深くて、独占欲が強いのはなまえも知ってるでしょう?」
「しっ…てる。だから、ごめんこれからは祥子みたいにちゃんと断るからぁっ」

噛み付くようなキス。歯列をなぞられて、逃げる舌を絡めとる。
終わったかと思えばもう一度。もう一度。もう一度。
息継ぎをする間もない志摩子のキスになまえの息は乱れ、腕一本を動かすことすらできないくらいに力が抜けきっていた。

「私からのチョコは欲しい?」
「ほしい…っ、志摩子の、欲しいっ」

志摩子は鞄から小さな箱を取り出すと中から一つチョコを手に取り自分の口に含む。

「んむっ、…ん……はぁっ」
「おいしい?」
「ん、おいし…」

なまえは幸せそうに笑い志摩子に啄ばむようなキスを贈る。

「ありがと…愛してる」
「私も愛してるわ…なまえ」


09/2/14

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