利己的ヒエラルキー


すっかり冷たくなった頬へ手を伸ばす。
死んでしまってから初めて触れたその滑らかな肌(なんて皮肉なことだろう)
その表情は自分が死ぬことを知らなかった、そんな幸せな顔。

生きているうちに触れたかったなんて思うのは私のわがままだろうか。
ああ、可愛い可愛い私のなまえちゃん…。
貴女が私だけを見ていてくれたらこんなことにはならなかったかもしれないのに…。
貴女の心のどこかにあの女がいなければ貴女だけ助けてあげられたかもしれないのに…。


夜の帳が下り、光り輝く月を見上げる。
なんて綺麗なの…。
月光がなまえちゃんの白い肌を照らし、さらに美しさを引き立たせる。



もしやり直せるなら、もう間違えたりしない。
大切なものを失うのはもう散々だもの。

私は…頬を伝う涙に気付かないふりをした。









09/8/19

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