気付き始めた恋心


私は今かなり怒っている。理由は簡単。馬鹿詩音のせい。
今日こそ学校に来るって言ったのに、結局来なかった。
ばかばかばか!詩音のばか!一週間も詩音に会えないなんてやだ!考えられない!
家に押しかければいいのかもしれないけど、あたしにはできないし!(詩音と密室で2人きりなんて恥ずかしくてしんじゃう!)
ああ、なんで詩音みたいな人と友達なんだろあたし。

なんて悩んでると聞き慣れた大好きな声が聞こえてきた。
あれ?あんなに怒ってたはずなのになんかすごく喜んでる?

「はろろ…って、あれ?何にやけてるんですか?なまえ。気持ち悪いですよ?」
「…っ」
「え?」
「ばかー!あたし帰る!」

だめだめ。こんな顔見られたらまずい。

「えー、折角来たのに帰るんですかー?」
「もう放課後なの!こんな時間に来る方が悪い!」

詩音に背中を向けると歩き出す。
でも2、3歩歩くと腕を掴まれた。夏なのに冷たい手に、どきっとする。

「じゃあ、一緒に帰りましょう」

詩音はあたしの手を取ると再び歩き出した。

手、繋いでる…
あ、れ?これって、密室で2人きりってのと同じくらい恥ずかしい状況?
ていうか、さっきまで2人きりだった…?
今更ながら恥ずかしくなってきた。顔に熱が集まってくるのがわかる。

「今度埋め合わせしますから」
「いいよ、別に」
「私がしたいって言ってるんですからなまえは、はいわかりました。って言ってればいいんです」
「強引だなあ、詩音は」
「今更です」
「それもそだね」

そんな会話を一通り終えると私の家の前に着くまで沈黙が続いた。

「じゃあまた月曜日にー…しお、ん?」

前に向いていた視線を横に向けると詩音は何とも形容しがたい複雑な表情をしていた。
えと、あたし、何かしたっけ?
今までの事を必死になって整理していると詩音に両手を掴まれた。
詩音?と名前を呼んでも詩音は固まったまま動かない。
それだけならまだいい、顔が近い、とても近い。
恥ずかしさがピークに達し、逃げようとするが、詩音の大きな眼に捉えられ、視線を逸らす事ができない。

「……」
「詩音どうし…」

しばらくしてもう一度声をかけると、詩音は動いた。
下の方で掴んでいた手を胸の前に持ってくる。

「土曜日、デートしましょう」
「え?」
「嫌ですか?」

そんなことない!むしろしたい!
そう思っても、口に出せるはずもなく…。

「そんなことは…!」
「じゃあ、決定です。後で連絡するんで待っててくださいね」

じゃあ明日
詩音はそう言って家路に着く。

「もちろん2人きりだよね…」





気付き始めた恋心

(もしかしてあたし…詩音のこと"あいしてる"…?)


08/8/11

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