間接ちゅー


「なまえ先輩。…好きな人がいるって本当なんですか?」

あたしは後輩の男の子に呼び出されていた。
何でみんな…あたしのことを好いてくれるんだろう。
この子が、詩音だったらいいのに…。

「先輩?」
「あ、ごめんね。…えっと、すきなひと…だっけ?」
「はい。」
「うん、いるよ。」
「そう…ですか。」

詩音、詩音、詩音、詩音。
この名前を呼ぶ度に貴女のことを好きになっていく。
周りの人にどう思われようと私は詩音がすき、すき。…愛してる。(こう思えたのも全部彼女のおかげ)

「俺、それでも先輩のこと好きでいいですか?」
「うん。ごめんね、ありがとう。」

でもそれは周りの人だけで…本人に気持ち悪いと思われたらあたしにとってこの世の終わり同然。
それくらいに詩音を愛している。この間本人に確認した時、熱弁してくれたけど、詩音は嘘をつくのがうまいから本当は気持ち悪いと思っているかもしれない。
詩音…ごめんね。…好きになって…ごめんね。



「なまえ〜!」
「ひやぁっ」

名前を呼ばれたとほぼ同時に抱きすくめられた。
詩音…だよね?

「ん〜、相変わらず良い抱き心地ですねー」
「う゛〜」

そういえばあの日から、詩音はあたしに触れることが多くなった。
あたしとしては嬉しいけど、以前以上に詩音の考えていることがわからない。

「何飲んでるんですかー?」

詩音はそう言って上半身に回していた手を首に移動させ、横から覗いてくる。…顔が近い。…きす、したい。

「いちごぎゅーにゅー。ん、のむ?」
「いいんですか?」
「うん。」

あたしに確認をとった詩音は近くにあったベンチに腰をかけて隣を軽く叩く。

「んー、おいし。」

気づくとあたしの手の中にあった紙パックが詩音の手の中にあった。

「あ…」間接きす…。

いつもは普通にしてたけど、さっきそのことについて考えていたせいもあってか、とても恥ずかしい。

「あれ?コレって間接キスですか?」
「なっ」

そして他人(ひと)に言われると尚恥ずかしい!
ばか詩音!ばか!ばか!ばーか!

「あっれぇ?顔が赤いですよー?なんでですかねー?」

それは、詩音がすきだからだよ。
でも詩音はそんなこと知らない。だから今もあたしの赤くなった頬をふにふにと突いてくる。

「ふふ。なまえは可愛いですねぇ。」
「む、そんなこといってもなにもでないよっ」
「そうなんですか?じゃぁやーめた!」
「あぁっ、ひどい!詩音ひどい!」

こういう詩音を見てると詩音を少しでも疑ったあたしに嫌気がさす。
すきだよ詩音。




しばらくは見ているだけにするね。


07/10/13

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