好きだけじゃ表せない想い


私の想い人、みょうじなまえ。 彼女は興宮の学校のクラスメイト。
笑顔がとっても可愛くて、先生にも信頼され、クラスメイトに溺愛され、学年では人気者、後輩には慕われている。
そんな完璧少女だけれど本人はまったく気づいてないらしく、極々普通の少女として生活していた。
一部の人間からはそういうところがムカつくとか言われてもいるみたいですけど、私にとってはただの嫉妬にしか見えない。

「はぁ…」
もう何度目のため息だろう…。ああ、なまえがいないとつまらない。

今は昼休みの時間。
なまえは、昼食の時間が終わってすぐに男に呼び出されていた。
どうせ告白か何かでしょう。


昼休み終了まであと十分。なまえが教室に帰って来る。
うんざりとでも言いたげなその表情を見て、断ったとわかり嬉しい半面、複雑な気持ち。
もしかして、そういう惚れたはれたに興味がないのかも。…なんて考えてしまう。

「どうしたんですかー?すごく疲れた顔してますよ?」
「わかってるくせにきくな!」
「ふふっ、で? 今日はなんて言ったんですか?」

す、好きなひとがいるから…って
なまえのその言葉を聞いて驚く。否、驚くという言葉は相応しくない。今すぐにでも泣きだしたい気分だ。…あぁ、ダメ。私、どうにかなりそう。
そうですよね、あはは…なまえは女、私も女。女同士なんて道理に適っていないじゃないですか。
考えてみればそんなのわかる。…考えなくたってわかる。
私だってわずかながらに思っていたじゃないか。好きな男が出来、付き合っていずれかは…って。
結局同性の私なんて親友以上になれっこないんだ。あーあ!…自分で言っててバカ馬鹿しくなってきました!

「なまえ、私保健室行ってきます。」
「え、大丈夫? あたしもいくよ。」

大丈夫、一人で行けます。(優しくなんて、しないで下さい。)
本当はそんなこと思っていないけれど、思えないけれど  …逃げ出したかった。現実を見たくなかった。

じゃあ、あたしもぐあいわるい。…だからあたしもいく!
本当はそんななまえを突き放し、距離を置きたかったけれど、
こうなった彼女がすごく頑固なことを私は知っていた。だから私は諦め、無言で保健室に向かうのだ。

「詩音、きげんわるい?」
「機嫌じゃなく具合です。」

ええー、ぜったいきげんわるいー
”むぅ”と悟史くんみたいにむくれながら保健室の扉を開けるなまえ。ああ、可愛いなぁ。…って何考えてるんですか私!
考えるだけで辛い…こんな感情、捨てなきゃいけないのに。

「あれ? しおーん、せんせーいなーい。」
「じゃぁ勝手にベット借りさせてもらいます。」

え、あー。ずるーい。
なまえはそう言って私と同じベッドに入り込もうとする。

「って、何やってるんですか!なまえは隣のベッド!」
「えー。あたしとなりのベッドじゃなくて詩音のとなりがいいー。」

我侭言わない。
しっしと片手で払うと、膨れっ面になるなまえ。だめだ…この娘はやっぱり可愛い。

「詩音のいじわるー!」

そういえば、なまえがこうやって人に甘えるのは私だけでしたっけ?
今までの私だったらなまえを受け入れていたかもしれない…
こんな風に保健室で2人きりなんていうシチュエーションだって本当はすごく嬉しいのだから。
けれど、今の私にとっては辛い以外のなにものでもない。
だって好きな人、いるんですよね?だったら…期待なんてさせないでください。

「詩音、ちょっと訊いていいかな?」

それはいつもと違い真剣な声色、そして表情も険しく、今までに見たことがないような、思いつめた顔。
不謹慎で不覚にも、心臓が早鐘を打つ。

「何ですか?」
「本当にいい?き、ききき嫌いになったりしない?」

さっきまであんなにも真剣な顔だったのに、今度は不安そうな表情になり、吃音まで起こす彼女。
可愛い、やっぱり…好きなんだな。

「当たり前です。」
私はそう言うのと同時に身体を起こす。
なまえもそれに気づくと同じように身体を起こした。

「あの…さ」


詩音は…同性を好きになるっていうこと、許されると思う?

へ…?
気づくと間抜けな声を出していた。だって…そんなことを言われるなんて、誰が思う?

「し…おん?」
「あ、いいんじゃないですか?好きなら…」
「ほ、本当にそう思う?」

確かに周りの目は気になるでしょうけど、やっぱりほら、最後は自分で決めなきゃどうしようもないじゃないですか!
だから、自分がその人のことが好きで、それを全うしたいならそれで良いと思いますよ。というか!それで良いんです!
自分に言い聞かせるように熱弁する。あれ…もしかして私気持ち悪いです?

「なまえの好きな人は女の子なんですか?」
「え、うん…やっぱ、変だよね。」
「なまえ…今の話聞いてました…?」

それなら、私が諦める必要なんてないじゃないか。…むしろ戦って勝ってみせる。なまえを落とすなんてかなりの強敵だが、私だって負けてない。

急に愛おしくなりなまえを抱きしめる。
抱きしめられたなまえは私の腕の中で抵抗を試みるも、小柄で力も弱いなまえがそんなことをしたってなんの意味もなさない。

「し、詩音はなせー!」
「少しくらいいいじゃないですかー。さっき邪険に扱ったお詫びですよー!」
「ううう、でも不意打ちははんそくだー!」

顔を赤く染めたなまえを見て期待してもいいのかもなんて思った私であった!
…なんて、そんなことはないと思うけれど、いつかそうなれるように、ずっとずっと彼女の隣に立っていられるようになりたい。…なろうと誓った。


07/8/19

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