一緒にいるだけで幸せ


一緒にいるだけで幸せ。そう思ってたのは私もなまえちゃんも、一緒……そのはずだった。


当時の彼女は分校で孤立していた。村八分にされていた沙都子ちゃんや悟史くんでさえ、ここでは大人の事情なんて関係ないとばかりに仲良くしていたというのに、差別とか、いじめとか、そういう理由ではなく、自分の意思で孤立していた。

私はそんななまえちゃんが……そうやって自分の殻に閉じこもり、心を開かないなまえちゃんが……あまり好きにはなれないでいた。


ある日、なまえちゃんが倒れた。
あまり好きではないはずなのに、周りが見えなくなる程に心配で、私の足は勝手に動き、知恵先生と一緒になまえちゃんを保健室に運ぶ。思っていたよりもなまえちゃんの身体は骨ばっていて、持ち上げた時に生じる力で折れてしまうかと思った程細く、意識のない人間は重いく感じると聞いていたのに、とても軽かった。

なまえちゃんが倒れたと聞き、監督はすぐに駆けつけてくれた。すぐに診察を始めるのかと思えば、「少し、この部屋から出てもらえませんか?」と監督は言う。知恵先生は事情を知っているのか、黙って頷き出て行ったのだけど、私はそれを不思議に思い、何故なのか問いただそうとした。
しかし、身体をゆっくり起こしながら「先生、大丈夫だよ」と、今にも消えてしまいそうななまえちゃんの声で思い留まる。

監督は、少し悩んだ様子で眉をひそめ、「そうですか」と小さく呟き診察を始めた。ブラウスのボタンをいくつか外し、聴診器を当てる。……その刹那、私は息を飲む。首の左側面から右胸にかけて走る大きな傷。雛見沢では、そんな非現実的な傷など、つくれる場所はダム現場くらいしかなく、ダム現場など、私以外の人間が立ち寄るなんて事はまずないので、その傷は故意につくられたものだという事を、私はすぐに理解した。そして、自分を壊した時の事を思い出した。

けれど、彼女の身体の傷は、それだけではない。憶測の域を超える事は今はまだないけれど、たぶん、おそらく。他にもたくさんあるはずだった。

痛い。
熱い。
痒い。
……赤黒いナニかに混ざり、蠢く…………蛆虫。
キ モ チ ワ ル イ 。

「竜宮さん……」

監督の声に、私ははっとして現実に返る。嫌な記憶。"い"やな事を忘れるために捨てた……礼奈の記憶。
何かを察したのか、監督は優しく微笑み頷くと、保健室から出て行った。

「……」

しかし、なまえちゃんは状況が理解できず、不思議そうな顔で無言のまま私の顔を見ている。

「レナがいるよ。だから……独りで抱え込まないで」


09/5/3


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