それって、プロポーズ?


「なまえ、おまえセンスねえな」

真面目な顔してそう言う竜児をにらみつけたのは近所に住む女子大生。
身長があまり変わらないせいか、二人の顔は近い。

「…竜児に頼んだのが間違いだった」

あーあ、もうやってらんなーい。と声を仕事仲間になまえは似せてそう言うと、
竜児が見たいつかの亜美と同じように脱力。
長い手脚を目一杯伸ばし、泰子がいつも腰を降ろす辺りで寝転がった。

「人に頼んどいてその態度かよ、だからおまえはモテないんだ」
「うわ、自分のこと棚に上げんだ。つーか、私だって彼氏の一人や二人…」

いるっつーの!そう続けようとしたなまえは思わず口ごもる。
指折り、何かを数えながら考える作業を一通りすると、今度は「うわ、ウソ…」などと言い口を両手で覆う。
「やっばいよ、竜児。私、半年も男がいない」

(約)半年前といえば、なまえと竜児が初めて会った頃。
半年で見知らぬ男子高校生と女子大生がここまで仲良くなれるかというところは謎だが、
泰子という女の存在のおかげで簡単に打ち解けることができた。

「知ってる。その話は酔ったおまえから散々聞かされた」
「ああ…というか、こんなことしてんのもそのせいだったわね」

そう、本人すら忘れていたが、周りの友人たちが次々と学生結婚していくという現実をつきつけられ、
焦りを感じたなまえは何か自分一つくらいできるようにしなくてはと、竜児に家事を教わっていたのだ。

「あー、竜児の鬼姑!泰子さんが"そういうことならあ〜、竜ちゃんに教わるといいよ〜"って言ったからこうして…!こうして…!」
「嫌々ならやるんじゃねーよ、まったくおまえってやつは」
「んー、でもせめて料理くらいは。って思うわけよ、女として」
「いっそのこと川嶋みたいになっちまえよ、おまえなら何でも言うこときく男つかまえるなんて朝飯前だろ」

竜児がそういうと、なまえは意味深に竜児の瞳をみつめる。

「竜児って、亜美のことそんな風に思ってたんだ」
「は?」

私にはそんなことできない。口にはしなかったが、竜児はなまえがそう言ったように思え、口を閉じる。
眉間に皺が寄り、人を一人くらいは殺めてそうな顔をしていても、決して「反論しやがってこのアマが」などと唇を噛んでいるわけではない。

「……」

竜児は何かを決心したようで、
今までにないくらい真剣な表情になる。

「なまえが家事できなくても、俺が一生やってやるよ」
「え?」







それって、プロポーズ?

(……っ)
(ありがと、竜児)


09/5/16

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