わたしだけのあなた


「ちょっと、なまえ!いた…いっ」

私のイライラに比例して、麻耶の腕を掴む力は強くなる。
後ろから聞こえる声を完全にシャットアウトし、ずんずんと歩いた。

「なまえ…なに怒ってんの?」
「うるさい」

周りの男の視線がむかつくほど麻耶に向かっているのがわかる。
今の麻耶を晒しているのでさえ嫌なのに、じろじろ見られているということが私のイライラを増幅させた。

だいたい麻耶も麻耶だよ、
あれほど言ったのに…!

「…っ、どこ行くの!?」
「私の家」

私はそれだけ言うと、さらに速度を上げ早足で家へ向かう。
一刻も早く麻耶を人目のつかないところ連れ出す。
それだけで私の頭の中はいっぱいだった(べつに、いかがわしいことを考えているわけではない)。





「どうぞ」

紅茶を淹れ麻耶に差し出すと、
私は正面へ適当に座り、向き直った。

「その服さ、」

太ももの大部分を晒したそのパンツ
つい触りたく…
じゃなくて…ああっもう!

「似合わない…?」

に、似合うさ、そりゃ…
でも、私としては面白くない、ってのが本音。
脚出しすぎだし、寒そうだし、何より周りの視線が気に食わない。

「そういう服着るなって言ったでしょ」
「別にいいじゃん」
「よくない!」

ていうか、だめって言ったのに何で着るんだよ…!
べ、別に私の前だけならいいけど、外に出る時にその格好なのは、絶対にいや。

「つーか、これ着る理由なんてひとつしかないし」

ぷいっと他所へ視線を向けむくれる麻耶。
ああ、そんな姿も可愛いなあ…って、違う違う!
だめだ、頭の中が麻耶のことでいっぱいになっておかしくなりそう…!

「理由…?」
「好きな人には可愛く見られたい…ってゆーか」

恥ずかしそうに目を泳がせて言う麻耶。
好きな人って、もちろん私のこと、だよね。
やばい、どうしよう、すっごく嬉しい。
でも

「他の男に見られるのは嫌」
「そんなこと、関係ない」

だって、あたしが見て欲しいのはなまえだけだし
なまえが可愛いって言ってくれるだけで、あたしは嬉しい

「麻耶、可愛い…すっごく可愛いよ」

そんな麻耶の言葉を聞いて我慢できなかった私は、
思い切りよく麻耶を抱きしめ、真っ赤になった麻耶の頬に自分の唇を押し当てる。

「ありがとなまえ、だいすき」
「うん、私も」


そして私たちはどちらからともなく、もう一度口付けた。


10/1/5

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