かわしまあみ


「ばかちー?」

待ちに待った夏休み。なまえは大河と一緒にスドバに来ていた。
休みだというのに、店内は学生で賑わっており、なまえの小さい声がさらに小さく聞こえる。

「そう、バカチワワ。略してばかちー」
「大河……名前も呼べないのに、馬鹿なんて言えないよ」
「何言ってるのよ、これは仲良くなるための第一歩じゃない」
「普通に亜美ちゃんでいいんじゃないのかな?」
「そんなのダメに決まってるじゃない!クラスのやつらと一緒なんて言語道断!」

それに、なまえ……あんた本当にばかちーの名前呼べるの?
ぐうの音も出ない程の正論に、なまえは一瞬身を縮こまらせた。

「でもばかなんて言われて嬉しく思う人なんていないよ、ばか大河」
「……」
「ほら」

しかし、負けず嫌いなのか、反論し大河を黙らせる。
そして嫌そうにむくれる大河に、なまえは満足そうに顔を綻ばせた。

「だから私は亜美ちゃんって呼「げ」
「あ、ばかちーだ」
「か、川嶋ひゃっ……」

噛んだ事を誤魔化すかのように、真っ赤な顔で大河を睨みつけるも、大河は知らん顔。
「おはよう、なまえちゃん」と笑いかけてくる亜美に、ろくに返事もできず、なまえは真っ赤な顔のまま口をぱくぱくさせる。

「おはよう、ばかちー」

「ほら、あんたも!」と言って肘で脇を小突かれ、なまえは現実に返る。

「おは……おはっおはよう!!……あ、あああああ大河あ!亜美ちゃんなんて言えないよお!!!」
「ばか」
「え?」
「……」

状況を把握しようと、なまえは大河と亜美の顔を交互に見比べる。大河は呆れ顔。亜美は顔を真っ赤にしていた。
次第に大河は無関心な表情から、愉しげな表情に変わる。

「あら、ばかちー、そんなに顔を赤くしてどうしたのかしら」
「う、うっさいわね!暑いのよ!」
「名前呼ばれただけで……プッ」
「なまえ?……あ! 川嶋さん、嫌だったよね、ごめんなさい」
「……いいわよ、亜美で」
「え?」
「嫌なわけ……ないじゃない(だって、あたしは……)」


09/4/2

 top 
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -