たくさんたべるきみがすき


「あんた最近太った?」

あたしが座るベッドで横になるなまえにそう声をかけると、壊れたロボットのようにぎぎぎと今にも音がしそうな動作でゆっくりとこっちを振り向く。その顔は心配になるほど真っ青だったが、まさかあたしが「大丈夫」なんて優しい声をかけるわけもなく、なまえの言葉を待った。

「ほんと?」

その言葉にお腹の辺りを探って肉をつまむと、その行為と本当につまむコトができてしまった現実になまえの顔は絶望に歪む。
別になまえが太ろうがあたしはなまえのことを嫌いになったりしないのだから、他のやつらの目なんか気にすんじゃねーよって思うけど、例のごとくあたしがそんなこと言うわけもなく、あたしから発されることのなかった思いに行動を遮られなかったなまえはベッドのスプリングを利用して勢いよく起きあがった。

「痩せます」
「あんたそれで痩せられたためしあった?」
「うっ……でもそれは亜美ちゃんが!」
「亜美ちゃんが?」
「ううっ……」

なまえの言い分はあながち間違いでもなく、今までのダイエットはあたしの妨害で失敗している側面もあった。何でってなまえのつくる料理、美味しすぎるんだっつーの……。
運動を嫌うなまえのことだから食事制限を始めるだろう。そんなことをし出したらあたしも付き合わされるに決まってる。そんなのは許さないし……そして何より、自分のつくった料理を始め、食べ物を綺麗かつ本当に幸せそうに食べるなまえが好きだった。……絶対教えてやんねーけど。

「なまえがどんななまえでもあたしはあんたのこと今更嫌いになるわけねーしそのままでもかわ……良いんじゃねーの?」
「ねえ、亜美ちゃん……亜美ちゃんって本当に私のこと好きだよね?」

ぎくり。
別に間違っちゃいないけど、好きだと言ったこともなければ、あまり行動で示したこともないあたしが今更そんな指摘をされるなんてプライドが許さなかった。
なまえが、自分自身のコトを好いてもいない人間を一方的に好きでいられる程のバカなお人好しだとは思ってなどいないが、ソレは胸に留めておいて欲しかった。

「はあ?何言ってんだよ好きだなんて一言も言ってねーだろうが!」
「私知ってるんだ。亜美ちゃんが食事中私のこと性的な目で見てるの」
「はあああ?わけわかんねーこと言ってんじゃねーよ」
「亜美ちゃん……」
「何よ!」
「顔真っ赤」
「うるさい……なまえなんていっぱい食べて太っちゃえばいいのよ」


16/12/27

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