Real face


「玉青はさ、好きな人いるの?」

ここは図書館、秘密の花園。
カウンター近くの席で、本を片手に談笑する少女が2人いた。その内容は年頃の女の子ならば一度はしたことがあるであろう、恋の話。
しかし、この話題そう長くは続かず玉青と呼ばれた少女の「さあ、どうでしょう」という言葉であっさりと終わる。

「またそうやってごまかす……」

先程玉青に疑問を投げかけたなまえという少女は大きくため息をついた。きちんとした返事が返って来るとは思っていなかったようだが、予想通り過ぎる反応に呆れたのも確かだった。

ふと、なまえは何かに気が付く。……視線だ。なまえ自身悪目立ちするため、視線には慣れているため気付くのが遅くなってしまったが、おそらくここに来てからずっと、と言っていい程見られている。
言い方は悪いが、その犯人を探すためになまえは周囲を見渡し、すぐにそれを突き止めた。
犯人はカウンターの向こう側に座っている1年生らしき少女。彼女はなまえと目が合うと、ばれてしまったせいかびくりと体を震わせた。
それに対し、なまえは愛想のいい笑みを送る。

「それより、なまえお姉様……眼鏡はどうされたのですか?」
「否、だって邪魔だし」

なまえはそう言って目が隠れる程長い前髪を掻き上げた。すると、ここでは確実に騒がれるであろう、とても整った顔のパーツが露わになる。

「ていうか、玉青の前だけならいいじゃん」
「しかし、お姉様……目立ちたくないと仰ったのは……」
「今は目立ってないからいいの」
「千代ちゃんに見られて後から騒がれたりでもしたら……!」

玉青の叱咤する声に「あ、あの子千代ちゃんっていうんだ」と能天気な返事をするなまえはこれまた能天気に"千代ちゃん"ににこにこと手を振った。
それに対し玉青は「なまえ!」と名前を大きな声で呼び、怒りを露わにする。……そして、すぐに大きな声を出してしまったことにはっとして謝罪した。

「取り乱してしまい、申し訳ありませんお姉様」
「いいよ、別に。……名前も呼び捨てで」
「……」
「幼馴染なんだからさ、寂しいじゃん?ねえ?」

反省して俯いたままの玉青の顔を覗き込むように話しかける。ほんのり頬が赤いような彼女の顔に「あれれれ?」と思い、眺めていると玉青は突然顔を上げた。そして片手を乱暴になまえに差し出す。

「眼鏡」
「あ、うん……はい」

なまえは玉青の勢いに負け、鞄から眼鏡を取り出し手渡す。その眼鏡を受け取ると、玉青は急いでなまえにかけさせた。

「ちょ、何すん「黙って」
「……はい」
「とにかく……私以外の人間がいるところで眼鏡を外すのはやめてくださいね」

何かに気付いたのか、その言葉になまえはくすくすと小さく笑う。
呆れたように、あやすように「はいはい」と言うなまえの表情それはもう綺麗なもので、

「わ、私はこれで失礼します」
と、流石の玉青も逃げ出した。

「ふふ……じゃあまた」

そう言ってなまえはだんだんと小さくなっていく玉青を見つめる。
すると、玉青がいきなり振り返り……

「わ た し が ……って、はあ!?」

こう見えても目と耳は良い。この眼鏡だって伊達だ。


「私が好きなのは、なまえお姉様です」
玉青は確かにそう言っていた。


執筆07/3/19
加筆16/10/9

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