おはよう


最近、色々と変わったことがある。まず一番大きな変化は、俺と逢坂が付き合うようになった事。
北村でも高須でもなくこの俺と。ということで、俺がいない間に2C内でまた一騒動あったらしいのだが、逢坂が暴れて黙らせたんだとか。自分の彼女だとはわかっていても、恐ろしい。
そして次に、逢坂が食事を俺の家でするようになった事。泰子さんが泣くは叫ぶはで、それはそれは大変だったのだが、高須の気遣いのおかげで今は平和に日々を過ごしている。

「逢坂、メシ出来たぞー!」

一つ下の部屋のチャイムを押し、聞こえないだろうと思いつつも、逢坂に声をかける。いつもなら騒がしく夕飯をせびりに来る時間だというのに、まだ自分の部屋にいるなんて珍しい。入るぞともう一声。預かっていた合い鍵を使ってドアの施錠を開錠する。そういえば、逢坂の部屋に入るのは久しぶりかもしれない。

「ぐっ……」

うきうき気分で部屋に入ったはいいものの、そこには信じられない光景が。脱ぎ散らかした衣服に、放置された皿たち……俺も掃除は好きじゃないから、ここは高須に任せよう……喜んでやってくれるだろうしな。というより、肝心の逢坂はどこにいるんだ?リビングにはいないと言う事は、まさか寝室?
ノックを数回し、寝室へ繋がる扉を開ける。するとそこには、案の定逢坂がいた。非情に残念な事に、腹を出して熟睡ている。……夏が近いといってもこれは風邪ひくだろ。

「逢坂、起きろ、メシだ」
「んー?りゅうじー?」
「寝ぼけてんじゃねーよ」

伸びをして、小さく欠伸する逢阪は非常に愛らしく、今すぐにでも撫でまわしたい衝動に駆られる。しかし……今の一言は、とても堪えきれそうにない。俺は逢坂の額を小突くと、部屋を出た。あいつらはそんなんじゃねえってわかってんのに……かっこわる。
中途半端な気持ちのまま自分の部屋に戻り、今日の夕飯であるチャーハンを皿に盛る。チャーハン……。確か、逢坂が初めて食べた高須の料理。俺は逢坂の好きな食べ物だからこうして頑張って作ってる。けど、逢坂ほどでないにしても、料理のできない俺がどうやったって高須に勝てるわけがなのだ。結局、俺はあいつに何もしてやれない。

「何、鍵閉めてんのよ、このアホ!早く開けなさい!」

ドアをガチャガチャと無理矢理開かんばかりの騒々しい音と共に、微かに聞こえる声。十分に聞こえているというのに、逢坂はまだ怒鳴り続ける。いくら1フロア一戸で防音完備といえど、そこまでしたら流石に近所迷惑だからやめろ!

「……」
「……」

扉を開くなり俺は逢坂に睨まれる。鍵の事はその……すまなかったと思っている。

「あんた馬鹿?」
「はあ?いきなりなんだよそれ」
「勘違いも大概にしなさい。私はね、なまえのことがほんとに、ほんとに本当に!大好きなの」
「!」
「確かに……竜児のことも好きだけど、その区別くらい私にだってできる」

あんただけが特別。今までにないくらい真剣な表情で逢坂は言う。くそ…情けねえな、俺。
「ほら、早くご飯にするわよ」という言葉と共に、もう一睨みすると逢坂はずかずかと部屋の奥に踏み込んで来る。もしかして……メシのために嫌々言ってとかじゃないよな。

「お、おい逢坂っ 」
「それと、その逢坂っていうのやめてくれない?」

まったく、遺憾だわ。そう言って彼女は肩をすくめてみせ、くすり笑う。ただでさえ、人形のように可愛らしい容姿なのに、そんな事をしたら、本当に。まるで。フランス人のようだ。

「大河」
「なに?」








(……もう二十時よ)
(お前は今起きたばっかだろ)


09/7/8

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