他の人と一緒がいい


「……みょうじさんってモテるのね」

 喉まで出かかった"やっぱり"という言葉をのみ込み、必要最低限の言葉を投げかけた。
 不意をついてしまったのか、普段クールな彼女からは考えられない、間の抜けた表情で固まるのを見て、可愛いなとただ漠然と思う。

「絢瀬さんほどじゃないよ」
「あら、手厳しいのね」
「それほどでも」
「褒めてないわ」

 どこかで聞いたようなやり取りに思わず頬が緩む。遠慮のない辛辣な返しにこんな気持ちになるなんて私ってMなのかしら。ああ、でも海未の事をいじるのも楽しいから、どちらでもあり、どちらでもないのかもしれない。
 なんて思っていると、みょうじさんは挨拶をしてそそくさと立ち去ってしまう。下駄箱だったから仕方ないのかもしれないけれど、もうちょっと話してくれたっていいじゃない。

「ふうん」

 ふと目線をやったゴミ箱に、彼女がモテる事を確信した要因が捨てられているのに気が付く。
 可愛らしい便箋に、可愛らしい文字で"みょうじなまえ先輩へ"と書かれている。悪いと思いつつ、つまみ上げて裏返すとベタにハートのシールで封がしてあった。
 女子高特優の同性間の色恋に興味がないのか、はたまた好きな人でもいるのか……あまり、知りもしないのになんだか興味がわいた。







 確か希が同じクラスだったな、と思い放課後の生徒会室で彼女の事を尋ねると、えらく嬉しそうに「なんや、えりちがそんなに興味持つなんて珍しい事もあるんやなあ、気味悪いわあ」なんて。……そんなの私からしたら希の方が気味が悪いわよ、失礼ね。

「ウチに訊かんと、本人に訊けばええんとちゃうん?」
「なんだか、逃げられてしまう気がして」
「それもそうやなあ……ほらあの子、シャイやから」

 まるで冗談みたいに言うものだから、俄然気になってしまう。というより、さっきはクールなんて言ったけれど、たまに学院内で見かけるみょうじさんは、私と会話している時と違って様々な人と笑い合っている事が多いから、シャイだなんて冗談としか思えなくて、意味深長な希の言葉に興味がわいたという方が多分正しいのだと思う。

 海未や真姫にアプローチをかけるのは、近しい距離だから簡単だったけれど、彼女に対してはどう仕掛ければいいのか難しいところだ。それに、希にたきつけられたみたいでちょっとだけ悔しい。
 ああ、でも……こうやってみょうじさんの事を考えるのは、
「хорошо」
すごく楽しい。


14/10/27

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