ひどく綺麗なその中で


まったく新学期早々災難だと思う。
まぁ自転車の二人乗りだから悪いのはあいつだろう。

二年に上がったばっかりだが、一年の頃から同じクラスだった奴が
自転車の二人乗り転倒して足を骨折したらしい。

新しい担任がホームルームで今日休んでいる一人のクラスメイトの話をした。

ばかじゃん、あいつ。
彼女できたからって浮かれてるからー!

ざわざわと話し声が飛び、なんだかんだと言う割にクラスの奴らでお見舞いに行く話が
持ち上がるあたり、結局そこそこ仲がいいんだろう。


学校の近所のここらでは一番の大きな総合病院に入ると、
忙しなく歩き回る人がたくさんで。

あらかじめ聞いておいた部屋は3階の4人部屋だった。

足を吊るされた見知った顔のクラスメイトは、部屋の一番奥、左側のベッドにいた。


「わざわざごめんー」

小声でそう言うクラスメイトにお見舞いだのなんだのを押し付け、
ふと顔を上げたその時だった。キラリと正面で何かが光った。



4月の柔らかな風が窓に吹き込んで、カーテンを揺らして。
病院の中庭を通り越してその向こう。
もう一年見ていない、けれど目を瞑ればいつだって瞼に思い出せるはにかんだ笑顔。




間違いない、新田だ。
一瞬しか見えなかったけれど、一年ぶりに見たあいつは目をつむっていたけれど。
見間違えるはずがない。だって、光った。




なんでここに。
ここは病院だ。
あいつは、入院している?
なんで。
もう事件から一年たった。



一気に溢れて処理しきれない頭と裏腹に、体は滑り出すように動いた。


「俺ちょっと飲み物買ってくるわ」

「はぁ?飲み物ならお見舞いに持ってきてくれたじゃんかよ」


クラスメイトの怪訝な声はもう後ろにあって、動き始めた俺はもう止まらない。


逃がすもんか。


この病院はコの字型になっていて、新田は正面に見えたから、あいつは反対側の3階にいるのだろう。
懸命に走ってたどり着いた反対側は、先ほどよりも人が少なかった。
どうやらこっちは個室しかないらしい。

丁寧に一個ずつ名前を確認して、見つけた。

327号室

その下に刻まれたテストの成績発表の一番と、おんなじ名前。

スライド式のドアに手をかけると、走ってきたせいか、緊張しているせいか、
やけに激しく動いている心臓の音が聞こえる。

腕に力を入れると、そんなもの必要ないくらい簡単にドアは動いた。



ベッドで体を起こして、パソコンにつないだイヤホンをしていた。間違いなかった。
一年前と何も変わらない、あいつが、新田が、いた。
不思議そうな顔をしている新田は、きっと俺が名前を呼べば
うっすらとほほを染めてはにかんで、きれいなえくぼをだすのだろう。



しかし今日は綺麗な二重は見られないのだろう。




なぜなら新田の目には、両目には、白く綺麗な、何にも染まっていない、包帯が巻かれていたのだから。



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -