図書館のある一角は僕の特等席だった。…そう、つい最近までは。
「……はぁ」
「ん?…あぁ、レギュラス」
僕の特等席に悠々とした態度で座る彼女は敵対するグリフィンドール生であり僕より2つ年上だ。
「なんで、ここに座るんですか」
「レギュラスに会えるもの」
「僕に会ってどうするんですか…」
彼女…名前さんは、頭がいいし、顔だって綺麗な人だ。だから、初めは僕に付き纏う彼女が嫌だった。
「ねえ、レギュラス?」
「…何ですか」
「テストどうだった?」
「普通です。」
彼女はどこから聞き付けたのかテストがある度に結果を聞きにくる。そして僕が点数を教えるたびに、そう今まさに、だ。
僕のテスト結果に目を通すごとに口角をあげて最後の1枚まで目を通したあと、綺麗な笑顔で決まって言うのだ。
「よく頑張ったね。偉い!」
彼女よりずっと低い点数なのに、偉いね、凄いね、そういって頭を優しく撫でる手を邪険に扱うことはできなくて、僕が何年も望んできた一言を、仕草を一度に叶えてくれる彼女に、胸が苦しくて幸せで、勿体無い。
「…名前さんには敵いませんよ。」
「ふふ、私は暇があるから」
綺麗に笑う彼女はいつも優しい嘘を吐く。…ブラック家という呪縛にもがく僕の唯一の安らぎ。
「…この薬草っていつ入れるんですか。」
お互いに背負うものがあるから、今はこの距離で、我慢する。
「これは、刻んで右に3回かき混ぜたあと入れるんだよ。」
「なるほど、このタイミングですか。」
「この薬草だけ刻むからね。擦り潰しちゃだめだよ?」
「わかりました。」
机の下、繋がる指先から感じるぬくもり。
今は、それだけで幸せ。
111004
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