任務中に受けた襲撃のせいで体や顔にいくつか怪我をしてしまった。
そこまで酷い怪我でもないのだけれど、隊長曰く『忍と言えど、嫁入り前の女を傷物にさせるわけにはいかん!』らしい。…いや本当にたいした怪我ないんだけどね。私も傷が残ってしまうのは避けたいし素直に病院へ行こうと思う。
「あら、名前…ってその傷どうしたの!ほら、こっちに来なさい!」
「え、っわ!サ、サクラ先輩っ、」
病院について受け付けも済まして順番を待っていたのに、早く!と言いながらサクラ先輩は私を容赦なく引きずっていく。痛いです!と声をあげても力が弱まるどころか強くなった気がする。いや、あのですね、ほんとにそこ、傷口なんですって!!なんて私の言葉は形になる事はなかった。
「そこ座って、服脱いで!」
有無を言わせぬ目で私を一瞥したあとテキパキと医療道具を準備する先輩に渋々、服を脱いでいく。傷口に服が擦れて痛い…、うう。これは意外と酷いかもしれない
「アンタって…綺麗な体してるわよね」
「…な、何を言ってるんですかっ!」
絶対いま、顔赤いよ、私!いや、でも、だって、体を褒められる事なんて滅多に無いし!
熱を持つ頬を手で隠しながら先輩から顔をそらせば、クスクスと笑い声が聞こえたけど気にしない。からかわれたひどい!
「さ、少し我慢しなさいよ!」
「先輩…、いたいの、やです。」
「ふふ、大丈夫!大丈夫!」
サクラ先輩の言う通り、手当てはあまり痛くなかった、あまり。
先輩にお礼を言い受付で支払いを済ませて、隊長の元へ行くために待機所へ向かっていると前方から誰かに名前を呼ばれて見れば、いの先輩がこちらに向かって大きく手を降っていた。
「いの先輩、こんにちは!」
「どこか行ってたの?」
「あー、病院です」
えへへ、と笑えばいの先輩は「今度は何処を怪我したの!」と慌てていたけれど、私そんなに頻繁に怪我してないです…。
「ぜ、全身…です?」
「何で疑問系なのよ!ちゃんと治療して貰ったのよね?」
「あ、はい。サクラ先輩に」
そう言った途端、空気がピシリと固まった。本当に、ピシリと。あれ、私何か地雷踏んだかな…。どうしよう。と悩んでいたら背後から聞き慣れない声が聞こえて忍らしからぬ情けない声をあげてしまった。
「わ、悪ぃ…驚かせちまったか?」
「あ、いえ!すみません。あの、いの先輩…今少し固まってるんです」
「…アイツ、どうしたんだ?」
えっとですね…、と切り出したところでいの先輩は正気に戻ったのか私にタックル…じゃない、勢いよく抱き締めてきた。苦しいです。首入ってます。
「名前!次からは絶対に私を呼びなさいよ!指名しなさい!」
「や、あの、指名って…」
キャバクラじゃないんですから。と苦しみに耐えながら笑えば見かねたのか、いの先輩のお友達さんらしき男性が声をかけてくださった。
「おい、いの…そいつ苦しがってんぞ」
「あれ?シカマルじゃない、どうしたの?」
「…ったく、まずはそいつを離してやれよ」
「あらやだ、名前大丈夫??」
「……は、い」
ごめんごめん、と軽い謝罪を受けて苦笑いで返せば、いの先輩に再び怪我について確認されてしまった。そんなに信用ないのかなぁ、また苦笑してシカマル?さんを見ればめちゃくちゃ眉間にシワを寄せていらした。やばい、いの先輩が私とばかり話すから…っ!
「次からは絶対私を指名しなさいよ!」
「努力、しますね」
心配して貰えるのはとても嬉しいのだけれど、流石に忙しい身であるいの先輩の手を煩わせる訳にはいかないので、あくまで努力はしてみますと伝えれば、やっぱりと言うかいの先輩は不満そうだった。
「あ、では私はこれで失礼しますね」
「えー、用事でもあるの?」
「隊長の所へ顔を出しに行こうと思いまして」
「なら、シカマルに送っていって貰いなさいよ!どーせアンタも待機所に行くんでしょ?」
そう言ったいの先輩に対してシカマルさんは眉にシワを寄せてしまった。うわあ、どうしよう、申し訳ないですごめんなさい!
「いえ!私は一人でも平気ですから!あ、シカマルさん、いの先輩に用があるんですよね!では、私失礼します!」
早口になっていたであろうけど、とりあえずこの場を去ろうと背を向けたのに、腕をとられてつんのめった。今のは結構危なかった
「待ってろ、用はすぐ済むから。…どうせオレも待機所行くしよ」
「…え、あ、はい」
任務に関する用みたいだったので、少し離れた所で待っていると、言葉の通り用事はすぐに済んだみたいでシカマルさんは数分で私の元へ近付いてきた。
「悪ぃな、…行くか」
「は、はい!」
待機所へ歩いている間、特に会話もなくただ後ろをついていただけの私にシカマルさんは幾度となく話し掛けて下さったけれど、どれも曖昧に答えてしまった。と思う。…どうしよう、緊張して覚えてないや
「おい?着いたぞ」
「っ!あ、はい!わざわざ、ありがとうございました!」
「いや、別についでみてぇなもんだし…まぁ気にすんな」
「いえ!でもありがとうございました」
バッ、と頭を下げて2度目のお礼を口にすれば、微かに笑う声が聞こえて頭をあげると、優しく笑うシカマルさんがいて心臓が強く跳ねたのがわかった。
私の気持ちを知ってか知らずか、シカマルさんは私の髪をくしゃりと撫でるものだから、全身が燃えるように熱くなって思わずうつむく。
「あんまり、怪我はすんなよ?」
「は、はい…っ」
「オレが守れればいいんだがな」
「………え?」
ほら、隊長ん所行くんだろ?と私を急かすシカマルさんにハッとしてお礼を告げて背を向けた私の耳元で囁かれたセリフに、驚いて振り向いたけれど、そこにはもう、誰も居なかった。
「…!〜〜っ!」
高鳴る胸に手を当てて、冷静を取り戻そうとすればするほど、冷静を失っていく気がする
――例えキズモノになったってオレが貰い手になってやるよ
去り際のメッセージ
(な、お前どうした!)
(た、隊長…む、胸が…っ!!)
(そんなに重傷だったのか!?びょういいいいんん!)
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実はシカマルはずっとあなたに片想いしてたり。シカマル視点書きてぇ^p^
120223
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